さいたま赤十字病院
ロボット支援下直腸切除術

直腸がんに対するロボット支援下手術は、2018年4月より保険適用となりました。

当科においても2021年3月より、ダビンチXiを用いたロボット支援下直腸がん手術を行っております。

 

直腸がんは大腸のなかでも直腸に発生したがんのことをいいます。直腸がんの手術では、がんを含む腸管を切除し、さらに転移する可能性のあるリンパ節も切除します(リンパ節郭清といいます)。その後に、腸管同士をつなぎ合わせます。(がんの位置によっては肛門まで切除しなければならないことがあり、その場合には腸管をつなぎ合わせることができず、人工肛門となります。)

 

大腸癌治療ガイドラインの解説 2009年版より

直腸がんの手術は病変が低い位置(=肛門に近い)にあるほど難易度が高くなります。直腸周囲には排尿機能や性機能をつかさどる自律神経が集まっており、これらを傷つけないように手術する必要があります。

 

杉原健一 編. インフォームドコンセントのための図説シリーズ 大腸癌. 改訂4版, p.11、61, 医薬ジャーナル社, 2012より

 

現在、直腸がんに対する手術の主な方法には、①開腹手術、②腹腔鏡下手術、③ロボット支援下手術があります。

①開腹手術

①開腹手術

②腹腔鏡下手術

②腹腔鏡下手術

③ロボット支援下手術

③ロボット支援下手術

腹腔鏡下手術は開腹手術と比較して、傷が小さい、疼痛が比較的軽い、術後腸管運動の回復が早いなどの特徴があり、入院期間が短縮されて早く社会復帰できるという利点があります。

 

さらに腹腔鏡下手術はカメラで手術部位を近接・拡大して見ることができ、開腹手術よりも神経や細い血管がよく見えるため、少ない出血量で正確な手術を行うことができるいう利点もあります。しかしながら、手術で使う器具が基本的には直線のものしかないという欠点がありました。

 

従来の腹腔鏡下手術で使用する器具は基本的に直線状であるため、方向を合わせるのが難しいことがあります。

 

これに対しロボット支援下手術では、腹腔鏡下手術の利点に加えて、ロボットアームに関節構造があったり、手振れ防止機能があったりすることにより、狭くて深い骨盤の中でも、正確で繊細な手術が行えるようになりました。

 

ロボット支援下手術ではアームに関節構造があり、的確な方向に曲げることができます。

 

直腸がん手術に手術支援ロボットを使用することにより、排尿障害・性機能障害や排便障害の低減、さらには局所再発の発生低下が期待されています。

 

すべての直腸がんにロボット支援下手術を行えるわけではありません。手術適応は院内のカンファレンスで慎重に検討します。また、患者さんに説明・相談したうえで決定させていただきます。

  • 当科でのロボット支援下直腸がん手術の入院日数は、およそ2週間となります。
  • 手術は全身麻酔下に行います。
  • 術者は関連学会の指針や、ダビンチ製造元のインテュイティブサージカル社が定めた術者条件を満たす外科医が担当します。
  • 手術費用は2021年現在、従来の腹腔鏡下手術と同額です。