さいたま赤十字病院

薬剤部

1.薬剤部概要
病院薬剤師ってどんなことをしているの?
【広報誌かがやき51号 抜粋】
日赤の薬剤師って?日赤で薬剤師として働くには?
【日赤薬剤会の紹介】

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①人員

常勤薬剤師数
35名
薬剤部事務
5名
院内CRC
3名
SPD(医薬品物流管理)
6名

②薬剤部の理念と方針

日本赤十字の理念に基づき、医療の担い手としての自覚を持ち、その業務に当たる。

薬剤部は、安心で安全な薬物療法を提供し、薬剤師はそれに貢献する。

③専門・認定薬剤師等

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2.薬剤部業務

病院薬剤師に求められる業務は多様化しています。これまでの調剤・薬品管理・製剤業務をはじめ、病棟では服薬指導を中心とした患者ニーズに応える業務に留まらず、医師・看護師等医療スタッフの業務負担軽減や病院医療安全への貢献といった医療ニーズも大きくなっています。令和3年9月に厚生労働省医政局より通知された「タスク・シフト/シェアの推進」により今後ますます業務が多様化することが予測されます。そのような医療ニーズに応えるべく、業務の効率化や質の向上、医療安全の向上を見据えた新規業務の開始など部内外への変革を提案しています。また、薬剤師一人一人の幸福感を満たせるような職場環境の整備も並行し、人的資源の確保とその活用といった組織運営に取り組んでいます。

①調剤業務

写真1:調剤
写真1:調剤

調剤室では、処方の調剤・鑑査・払出しを24時間365日行っています。入院処方の調剤が主業務ですが、その他に外来処方の調剤、患者対応、在庫管理などを行っています。調剤支援システム・散薬監査システム・全自動散薬分包機・薬袋プリンタ・全自動錠剤分包機などITの導入や、調剤補助者によるタスクシフト、院内処方の問合せの簡素化の取り決めなど業務の効率化を進めています。薬剤師が、「薬剤師にしかできない業務」に集中できることで適正な薬物治療の推進に寄与しています。(写真1)

②薬品管理業務

写真2:オペ室の注射カートの確認
写真2:オペ室の注射カートの確認

注射薬のピッキングマシーンや適正な供給・管理を行うシステムなどITの導入による省力化と医薬品SPDへの業務委託によるタスクシフトを進めています。その一方で、昨今の医薬品供給不足への対応や手術室業務、救急外来業務など、薬剤師の専門性を必要とする薬品管理に選択、集中することで患者さんの治療支援に努めています。(写真2)

③製剤業務(抗がん剤調製・TPN調製・院内製剤)

写真3:抗がん剤の調製
写真3:抗がん剤の調製

入院および外来患者の原則すべてのレジメン鑑査と、室外排気型安全キャビネット(クラスⅡ B2)3台を使用した抗がん剤調製を行っています。調製には、すべてのバイアル抗がん剤において閉鎖式薬物移送システムを使用し暴露対策を講じ、さらなる安全性の向上に取り組んでいます。(写真3) 

また、入院患者の高カロリー輸液の調製をはじめ、軟膏や点眼薬などの院内製剤の調製業務も併せて行っています。

④医薬品情報室業務

医薬品情報室では、医薬品情報の収集、評価、整理・加工、伝達を行っています。具体的な業務としては、最新の医薬品情報を収集し、適宜、院内へDIニュースを配信するほか、薬剤師に対する情報提供や他職種からの問い合わせ対応を行っています。また、「薬事委員会」では事務局として、医薬品の採用の審議や院内における医薬品情報の管理を行っており、患者安全を検討する「医療安全推進委員会」では、医薬品安全小委員会を開催し、院内の医療安全に寄与しています。その他にも、電子カルテシステム、部門システムの薬品マスタ管理や、他部署との情報共有、医薬品の適正使用のためのサポートを担っています。

⑤病棟薬剤業務

写真4:持参薬報告
写真4:持参薬報告

各病棟に専任の病棟薬剤師を配置し、薬剤管理指導業務による患者指導に留まらず、「病院と患者に貢献し、病棟で存在意義を発揮する」を部署方針として他職種からの相談対応、副作用回避のための処方確認や薬物血中濃度の管理をはじめとした治療支援業務を行っています。

 全入院患者に対し、電子カルテシステムを用いた「持参薬報告」(写真4)を行い、また昨年度より持参薬処方の代行入力を一部診療科で開始する事で医師・看護師の業務負担軽減や医師による誤処方の回避など医療安全にも貢献しています。退院時には、入院中使用した薬剤についての情報等を「退院時薬剤情報提供書」に記載しお薬手帳に貼付し、患者さんと共にかかりつけ薬局や転院先の施設へ情報提供する取り組みも一部行っています。 

また、ICU、HCU、CCU等の集中治療室や救急病棟など急性期病棟にも薬剤師を配置しております。刻一刻と変化する病態に応じて適切な薬物治療提供できるよう、日々モニタリングや回診へ参加しています。

⑥がん化学療法業務

現在、外来がん治療認定薬剤師(JASPO)とがん薬物療法認定薬剤師(日本病院薬剤師会)を中心に外来化学療法室での外来指導やレジメン審査委員会などに参画しています。現在、外来化学療法の質向上を目指し、保険薬局との情報共有による連携を行っております。トレーシングレポートや服薬指導ツールに関しての相談や提案等をサポート薬局との連絡会を通して行い、患者に対してきめ細かな治療ができるように取り組んでいます。

⑦治験・臨床研究業務

治験事務局では、治験、臨床研究、製造販売後調査(以下、治験等)など、創薬から育薬までの円滑な医薬品開発の実施支援と品質向上、環境整備を行っています。 治験事務局は治験等を実施するうえで必要な手続きや記録の管理、院内スタッフのみならず治験等に関係する多くの人々の意見調整を主な業務としています。また、治験事務局では治験審査委員会事務局も兼務しており、当院で実施される治験等が科学的かつ倫理的に行われるよう支援しています。

3.チーム医療

①感染制御チーム(ICT)・抗菌薬適正使用支援チーム(AST)

写真5:抗菌薬適正使用カンファレンスの様子
写真5:抗菌薬適正使用カンファレンスの様子

感染制御チーム(ICT)と抗菌薬適正使用支援チーム(AST)が組織され、特に医師、看護師、臨床検査技師と協働したASTでは薬剤師が主体的な役割を担い、感染症治療に参画しています。(写真5)また、病棟薬剤業務のひとつであるTDMについては病棟薬剤師と連携し、薬物治療の支援と質の向上に努めています。

②栄養サポートチーム(NST)

栄養サポートチーム(NST)は、患者さんの栄養状態の改善を目的に、医師・歯科医師・看護師・薬剤師・管理栄養士・言語療法士の多職種で構成された医療チームです。各科からの依頼を受けて、週に1回の回診およびカンファレンスを行っています。チーム薬剤師は、栄養状態や病態を把握し、輸液栄養の処方設計や薬物の治療介入の必要性、副作用の可能性を薬学的知見からアプローチしています。また、NST委員会の一員として、経腸栄養剤の品目の検討や院内向けの勉強会や講演会、セミナー等、委員会の運営にも参画しています。

③褥瘡ケアチーム

褥瘡ケアチームは、医師・看護師・薬剤師・管理栄養士・理学療法士の多職種で構成された医療チームです。各科からの依頼を受けて、週に1回の回診およびカンファレンスを行っています。チーム薬剤師は、病態や服薬状況を把握し、局所治療への提案をはじめ、栄養状態の改善や排便コントロールのサポート、副作用の可能性等について薬学的知見からアプローチしています。また、褥瘡対策委員会の一員として、褥瘡発生状況の把握・対策検討、院内向けの勉強会等、委員会の運営にも参画しています。

④ 認知症ケアチーム

認知症ケアチームは、認知機能が低下した患者さんへ総合的なケアサポートを行う医療チームです。医師・看護師・精神保健福祉士・薬剤師・理学療法士の多職種で構成されており、週に1回の回診を行っています。チーム薬剤師は服薬状況やせん妄リスク等について確認し、不眠・不穏・認知症に伴う行動・心理症状等に対する薬剤の適正使用について薬学的介入を行っています。

⑤緩和ケアチーム

緩和ケアチームは、医師(身体症状担当・精神症状担当)、緩和ケア認定看護師、公認心理師、医療ソーシャルワーカー、管理栄養士、歯科衛生士などの様々な職種とともに週一回のカンファレンスを行い、各科からのコンサルトに応じています。その中で薬剤師は主疾患や合併症、それに伴う治療薬を把握し、緩和治療をサポートしています。また、院内外の医師(看護師・薬剤師等他職種も一部含む)を対象とした緩和ケア研修会を定期的に開催し、会の運営に参画しています。

⑥糖尿病ケアサポートチーム

糖尿病ケアサポートチームは、糖尿病内分泌科の医師、薬剤師、看護師、栄養士、理学療法士を中心に糖尿病治療の向上に努めています。年一回、世界糖尿病デーに合わせて他科の診療科医師にも協力をいただき、糖尿病市民公開講座を開催しています。また、月に一回程度糖尿病教室を開催しています。講座や教室では、患者さんに糖尿病の病態や治療、合併症、インスリンや検査器具の手技、食事・運動・シックデイをはじめとする生活の注意事項をわかりやすく説明しています。

⑦吸入指導

呼吸器内科の医師、看護師と連携し、吸入薬各デバイスの手技に関するチェックシートを作成し、吸入指導の統一化を推進しています。このチェックシートをお薬手帳に貼付し、外来・保険薬局・入院と継続的に運用することで、患者さんの吸入手技の向上・維持に努めています。当院では、呼吸器内科の医師と呼吸器内科病棟担当薬剤師が主体になり、院内スタッフと地域の保険薬局薬剤師を対象に各吸入器デバイスの特徴を確認・情報共有する勉強会を年に一回開催しています。

地域医療連携 薬-薬連携(処方・調剤に関すること)

⑧ 災害対応

日本赤十字社の使命として災害時の救援活動は薬剤師も必要であると考え、当院常備救護班には薬剤師の人員を確保し、要請に応じて対応出来る体制を整えています。東日本、熊本での地震災害には当院薬剤師も多数救援に出動しました。これまでの災害医療には、医師と看護師のみが医療職として救援活動にあたっていましたが、薬剤師の帯同で活動の幅が大きく広がるという評価もされています。

4.学生実習

学生実習の受け入れを積極的に行っており、病棟実習や抗癌剤、高カロリー輸液の調製をメインにスケジュールを組んでいます。成果基盤型教育をコンセプトに、まずは学生が薬剤師と同じ業務をやってみて、できない部分を薬剤師がフォローするという体制で実習を進めていきます。そうすることで学生は指導薬剤師をメンターとし、自分にできることできないことが明確になり、効率の良い実習となります。また、モデルコアカリキュラムの改訂に伴い、専門職としてのプロフェッショナリズムを育めるよう、SEA(significant event analysis)を用いた振り返りにも力を入れています。 

※SEA(significant event analysis)とは プロフェッショナリズムの教育方法として有用なモデル。事例や症例に関して当事者が深く振り返り、言語化し、今後の改善に対する提言をするという流れで実施する省察の手法。

5.薬-薬連携

近隣のサポート薬局をはじめ、地域の院外薬局と円滑な薬‐薬連携を図り、患者さんが安心・安全な薬物治療が行えるようサポート体制の構築に努めています。令和5年3月からは、入院前服薬情報提供への取り組みも始めました。

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令和4年度 業績一覧

学会発表(演題・テーマ・タイトル 等) 学会名・研究会名等 発表年月日
Web開催による新任薬剤師研修会 -座談会の取り組み- 日本病院薬剤師会関東ブロック 第52回学術大会 2022.8.21
ICUにおける腸管機能改善薬一覧表と薬剤師介入が排便コントロールに与える影響 第58回日本赤十字社医学会総会 2022.10.6
ハイブリッドER におけるECPR標準医薬品セットの妥当性の評価 第58回日本赤十字社医学会総会 22022.10.6
論文発表・雑誌投稿(演題・テーマ・タイトル 等) 掲載雑誌名 発行年月号
がん悪液質を発症した進行膵臓がん患者の味覚障害がアナモレリン塩酸塩の投与により改善した1症例 アプライド・セラピューティックス 2023年18巻p.9-15
わかりやすい薬剤情報提供のための写真付薬剤情報印刷システム じほう 2022年7月
わかりやすい薬剤情報提供のための写真付薬剤情報印刷システム じほう 2022年9月
わかりやすい薬剤情報提供のための写真付服薬指導CD-ROM じほう 2022年9月
わかりやすい薬剤情報提供のための写真付薬剤情報印刷システム じほう 2023年1月
わかりやすい薬剤情報提供のための写真付薬剤情報印刷システム じほう 2023年3月
わかりやすい薬剤情報提供のための写真付服薬指導CD-ROM  じほう 2023年3月
6.その他

①薬剤部 見学希望の方へ

薬剤部の見学は随時受け付けています。

メールで見学希望の旨、下記よりメールをお送りください。

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