お知らせ
最新の内視鏡システムを導入して、診断治療にあたっています。最先端の診断治療技術を習得した専門医師が早期癌の診断と治療に最も力を入れています。
大腸内視鏡検査は、内視鏡挿入時に腸を過伸展させると痛みを生じます。我々は腸を伸展させないで挿入する(軸保持短縮法)方法をとっており、高い技術で痛みの少ない検査を提供いたします。しかし、癒着が高度である場合など、専門医が施行しても痛みが生じることがあります。そのような患者さんには積極的に鎮静剤を使用し、苦痛のない検査を受けていただくことができます。
ポリープを認めると、組織検査(生検)を施行するなど、質的診断を介さずに切除することが一般的です。我々は、ポリープを認めた場合まず、それが腫瘍なのか否か(腫瘍・非腫瘍の鑑別)、早期癌ならば大腸壁のどの程度まで浸潤しているのか(深達度診断)という質的診断が重要と考えます。拡大内視鏡は無駄な生検をすることなく腫瘍・非腫瘍の鑑別、早期癌の深達度診断が可能です。大腸内視鏡検査は当院では全例、拡大内視鏡による検査を行っています。
拡大内視鏡は、対象病変を瞬時に80倍まで病変を拡大して観察することができます。拡大することにより、腫瘍表面の微小な血管や(microvessel pattern)、腺管開口部を拡大(pit pattern)することにより、前述した高いレベルの質的診断を行うことができます。拡大内視鏡は大腸において最もその有用性は発揮されますが、食道表在癌、早期胃癌に対しても全例拡大内視鏡を使用することにより、質の高い診断を提供できます。外科と緊密な連携を取り、過不足ない治療を心がけています。
内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)は、腫瘍径の大きな早期癌に対して一括切除を目指した内視鏡手術です。従来は、ワイヤーをかけて切除する粘膜切除術が行われてきましたが、20mm以上になると、分割切除になる可能性が高くなります。分割切除の問題点は、病理組織診断が不十分になってしまうこと、さらに再発の可能性が20%以上あることです。内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)とは、大腸では20mm以上の大型な平坦な腫瘍に対して一括切除を目的として行う内視鏡的手術です。病変の周囲に粘稠度の高い液体を注入した後(局注)、長さが1.5mm程度の微小な高周波メスで病変の周囲を切開します(粘膜切開)。その後腫瘍の下の層を切開しながらトンネルを掘っていくことになります(粘膜下層剥離)。トンネルを掘り終えれば切除は完了となります。一括切除が成功すると再発の可能性を極めて低くすることができ、摘出した検体の詳細な病理組織診断が可能です。
胃では既に多くの内視鏡医が手技に熟練しています。技術的に特に難易度が高い大腸癌に対しては、症例数が多い施設あるいは熟練医による施行が望まれるのが現状です。当院では、大腸の内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)は、熟練医のみで担当し、胃の内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)は、熟練医と修練医で担当しています。また、内視鏡的粘膜下層剥離術を目的として紹介された患者さんに対しては、必ず当施設において拡大内視鏡により精査し治療方針を決定・説明するという流れで対応しています。
当科では、早期癌から進行癌まで幅広いステージの消化管癌患者様への診療を行っております。拡大内視鏡やCT検査などを用いて適切な診断とステージ判定を行い、切除不能進行癌の場合は、化学療法(抗癌剤治療)中心の治療を行います。食道癌の場合などは、放射線治療を併用することもあります。入院または通院で化学療法を行いますが、通院抗癌剤点滴は専用の外来化学療法室で受けていただいております。
炎症性腸疾患 (Inflammatory Bowel Disease; IBD)とは、消化管に慢性的な炎症を起こす原因不明の疾患であり、潰瘍性大腸炎とクローン病からなります。この疾患には定期的な上部・下部消化管内視鏡検査での病状モニタリングが必須となりますが、必要に応じて鎮静剤・鎮痛剤も使用して患者様の負担を軽減すべく配慮しております。近年、IBDの治療は様々な新規治療法が導入され、格段の進歩を遂げています。病状がある程度重い患者様には、生物学的製剤をはじめとした新規治療法も積極的に導入しており、症状が軽減した患者様も多くおられます。当科では、診断・治療の両面でIBD患者様がより効果的で負担の軽い医療を受けられるような診療体制をとっています。
食道胃静脈瘤とは、肝硬変などに合併する肝臓内の血流異常(門脈圧亢進症)に起因した疾患です。
食道静脈瘤の治療は、内視鏡的静脈瘤結紮術(EVL)がその簡便性から広く普及していますが、当院では、より再発の少ない治療を目的として、主に内視鏡的静脈瘤硬化療法 (EIS)を行っています。また治療難治例に対しては、経皮経肝静脈瘤塞栓術などのカテーテル治療を併用し、静脈瘤の完全消失を心懸けています。一方胃静脈瘤に対しては根治的治療としてバルーン塞栓下逆行性静脈瘤塞栓術(B-RTO)によるカテーテル治療を行っており、緊急出血時においては救急医と連携して、安全かつ迅速な内視鏡による止血体制を整えています。なお当院における静脈瘤治療については、全例を静脈瘤治療に精通した医師が行っています。
また静脈瘤を認めるからといって、必ずしも治療が必要とは限りません。出血していない静脈瘤については、内視鏡所見はもちろん、肝臓内の血流動態を超音波やCTで十分評価した上で、治療の必要性を評価しています。
一括切除率 | 完全一括切除率 | 術中穿孔率 | 遅発穿孔率 | 後出血率 | |
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大腸ESD | 99.8% | 98.8% | 0.3% | 0.1% | 0.6% |
胃ESD | 99.7% | 98.6% | 0.8% | 0.4% | 2.5% |
食道ESD | 99.4% | 98.8% | 0% | 0% | 0% |
2013 | 2014 | 2015 | 2016 | 2017 | 2018 | 2019 | 2020 | 2021 | 2022 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
治療件数 | 9 | 10 | 9 | 6 | 19 | 28 | 23 | 19 | 22 | 16 |
一括切除困難 | 0 | 0 | 1? | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
VM1、HM1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 |
術中穿孔 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
遅発穿孔 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
後出血 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
2013 | 2014 | 2015 | 2016 | 2017 | 2018 | 2019 | 2020 | 2021 | 2022 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
治療件数 | 101 | 111 | 123 | 102 | 128 | 163 | 148 | 127 | 145 | 163 |
一括切除困難 | 1 | 1 | 0 | 0 | 1 | 0 | ||||
VM1、HM1 | 4 | 1 | 2 | 2 | 2 | 1 | ||||
術中穿孔 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 3 | 2 | 1 | 1 | 2 |
遅発穿孔 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 1 | 1 | 0 | 2 |
後出血 | 2 | 4 | 4 | 3 | 7 | 2 |
2013 | 2014 | 2015 | 2016 | 2017 | 2018 | 2019 | 2020 | 2021 | 2022 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
治療件数 | 66 | 84 | 85 | 116 | 118 | 147 | 155 | 132 | 141 | 143 |
一括切除困難 | 0 | 0 | 0 | 2 | 0 | 0 | ||||
VM1 | 0 | 0 | 0 | 3 | 5 | 2 | ||||
術中穿孔 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 1 |
遅発穿孔 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 |
後出血 | 1 | 0 | 1 | 1 | 1 | 1 |