さいたま赤十字病院

整形外科

上肢グループ

上肢グループでは、肩甲帯(鎖骨・肩甲骨)に始まり、肩・肘・手関節から手指に至る上肢の疾患(急性外傷および陳旧性外傷・慢性疾患・スポーツ障害など)の治療を行っています。
上肢疾患の手術件数は年間600〜700例程度と豊富で、日本手の外科学会 認定の手の外科専門医の基幹研修施設となっています。
当院には3名の作業療法士がおり、必要に応じて入院もしくは通院により術後リハビリを行っています。上肢グループ医師と作業療法士とで定期的にカンファレンスを行い、個々の症例について定期的に検討して成績の向上に努めています。

外傷疾患

骨折・脱臼・腱断裂や神経・血管損傷の治療を行っています。特に手指の構造は微細であるため、損傷に応じて拡大鏡(ルーペ)や手術用顕微鏡を用いてマイクロサージャリーを行っています。切断肢・指の再接着(症例参照)も行います。 屈筋腱損傷の後療法では、通院リハビリによる早期運動療法を行っており、良好な治療成績が得られています(症例参照)

慢性疾患

上肢の末梢神経障害(手根管症候群、肘部管症候群その他神経麻痺など)や、変形性関節症・関節不安定症、関節拘縮(外傷後拘縮、デュプイトレン拘縮(症例参照)、リウマチ性疾患、骨軟部腫瘍など、多種多様の疾患に対して豊富な治療経験を有しています。

スポーツ疾患

野球肘の治療(離断性骨軟骨炎に対する形成手術)やTFCC(三角線維軟骨複合体)損傷(症例参照)を始め、各競技の特性を考慮して病態に応じた治療を行います。手関節鏡手術も行っています。

実際の症例

母指再接着

(1)
(2)

仕事中に機械に挟まれて母指を切断したが、再接着後3ヶ月。再接着された母指は支障なく使用されている。

 

示指屈筋腱断裂

(1)
(2)
(3)

(1)カッターで誤って切ってしまい受傷し、示指DIP関節屈曲不能。
(2,3)術後6週後。早期運動療法を実施し、すでに100%の可動域が獲得されている。

 

デュプイトレン拘縮

(c-1)
(c-2)

(C-1,2)デュプイトレン拘縮により中指と小指の伸展が制限されていた。

(c-3)
(c-4)

(C-3,4)手術後1年。伸展制限はほぼ改善されている

TFCC損傷

(c-1)
(c-2)

(1,2)ともに手関節を捻って受傷し手関節尺側部痛や不安定性が生じたが、他院で診断がつかず紹介受診した症例。 検査によりTFCC損傷と診断した(右図は関節造影、左図はMRI)。
難治性の場合には、縫合や再建手術を行っている。

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上肢の人工関節について

加齢に伴う変形性関節症、関節リウマチ・過去の外傷・炎症を誘因として発生する関節症・高度に破壊され修復不能な関節周辺骨折などに 対して人工関節が行われています。
指関節は、中手基節間関節(MP関節)、近位指節間関節(PIP関節)、遠位指節間関節(DIP関節)に 分けられますが、可動性よりも安定性が求められる母指のMP/IPを除いた4本の指のMP/PIP関節が人工指関節の適応となり、基本的にDIP 関節には適応がありません。

人工肘関節置換術は、関節リウマチや外傷に伴う関節変形による疼痛や不安定性、著明な可動域制限が適応となります。 軟部組織の状態が良好で不安定性が無く、比較的骨量が保たれている症例には表面置換型を、ムチランスタイプの関節リウマチなどの関節破壊が 高度な症例には半拘束型を行っており、症例に応じて適した人工関節を選択しています。

MP関節

関節リウマチによる変形(尺屈変形・掌側脱臼)に伴う手指巧緻障害や、炎症・外傷後の変形による慢性的な疼痛や著明な 可動域制限が人工関節の適応となります。当科では、MP関節における指の内・外転運動を許容する半拘束型人工関節を使用しています。

人工指MP関節置換

(1)
(2)
(3)

(1,2,3)数十年来の関節リウマチにより示〜小指MP関節の破壊・脱臼が生じており、疼痛や可動域制限により日常使用に困難が生じている。

(4)
(5)
(6)

(4,5,6)示〜小指には人工関節を行い、母指にはMP関節固定術を行った。手術後リハビリには拘縮予防のために装具を併用

(7)
(8)

(7,8)手術後6ヶ月。指可動域は改善し、疼痛なく日常使用可能となっている。

PIP関節

加齢や外傷・リウマチなどによる関節変形・軟骨欠損に伴う慢性的な疼痛や著明な可動域制限が人工関節の適応となり、骨切除量を最小限とする表面置換型人工関節を使用しています。指背側の伸展機構の修復を要する症例でない限り、術後早期運動を可能にする腱を切離しない掌側切開で手術を行い、可動域の獲得に努めています。

(A-1)
(A-2)

(A-1,2)中指の変形性PIP関節症により関節破壊・変形が生じている。

(A-3)
(A-4)

(A-3,4)人工指関節置換後。変形は消失し、疼痛は消失した。

肘関節

(1)
(2)

(1,2)関節リウマチによる肘関節変形があり、疼痛・可動域制限が生じていた。

(3)
(4)

(3,4)軟部組織の状態が良好で骨量が温存されていたため、表面置換型人工関節を選択した。

肘関節(高度破壊例)

人工肩関節の機能は筋腱など軟部組織の状態によるところが大きく、これらの可及的な修復を重視しています。

(1)
(2)

(1,2)関節リウマチにより高度の肘関節破壊・不安定性が生じていた。

(3)
(4)

(3,4)半拘束型人工関節を行い、安定した肘関節機能を獲得した。

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