循環器内科

診療科一覧

お知らせ

学会等により休診となる場合がありますので、平日の午後、時間内に外来にお問い合わせください。

診療科紹介

新しい技術で心臓疾患の治療から予防まで幅広くカバー
循環器内科とは、“心臓” や“血管” に関する病気を専門に診察する科になります。
不整脈・狭心症・心筋梗塞・動脈瘤・弁膜症・心不全などが、主な疾患として挙げられますが、高血圧・脂質異常症(高脂血症)・動脈硬化・糖尿病・喫煙者・睡眠時無呼吸症候群を患っている方などは、重大な循環器疾患がすでに発症していたり、または将来発症するリスクがかなり高くなります。それらの治療、予防も循環器内科の治療範囲になります。

診療案内

診療内容・特徴

心臓カテーテル治療、なかでも経皮的冠動脈インターベンション(PCI)は、1977年、スイスの医師Andreas R. Gruentzigがバルーンで冠動脈を膨らませたことに始まります。現在では第3世代とされる薬物溶出ステントを用いた治療と、それに際してのさまざまな医療機器の進歩もあり、多くの患者様に安心安全な治療を提供することができるようになりました。

当院では1981年から冠動脈造影を含む心臓カテーテル検査が開始され、その積み重ねた経験と実績は医療機器の進歩を十分修飾しうるものになり、より適切で安全な医療を提供することができています。現在では夜間休日含む24 時間365日いつでも対応可能な緊急カテーテル検査・治療体制を整えており、地域の皆様に少しでもお役に立てるよう尽力しております。

また、当院では冠動脈インターベンションで培った技術を生かして、末梢動脈(内頚動脈、鎖骨下動脈、腎動脈、下肢動脈)のインターベンション治療(EVT)にも積極的に取り組んでおります。

虚血性心疾患

心臓の働きって?

人間が生きていくためには体のすみずみまで十分な酸素や栄養が行き届くことが必要で、運搬役をしてくれるのが血液です。その血液を全身に送り出すポンプの働きをしているのが心臓です。心臓一回の収縮で約70cc、一日におおよそ10万回絶え間なく収縮するとされていますから、一日になんと7000リットルもの血液を送り出してくれていることになります。心臓の大きさはだいたい握りこぶし大くらい、小さな臓器が生きるために大切な働きをしてくれています。

絶え間なくポンプを駆動させるためにはエネルギーが必要です。
ですからポンプ(心臓)にむけてエネルギーを届ける専用の血液の通り道が存在しています。この通り道のことを、冠動脈、といいます。冠動脈は、心臓のポンプの働きで送り出された血液が最初に通る大通り(大動脈)からすぐのところで分岐する脇道に相当します。つまり、心臓は新鮮な血液をいちばんに受け取っているのです。

冠動脈、すなわち大動脈からの脇道は左右に2本あり、さらに左の脇道は2本にわかれますから、計3本の主要な通り道となって心臓の筋肉(心筋)にエネルギーを送っています。 ちなみに、冠動脈は心筋の周りをまるで王冠のようにぐるりと覆っていることから名付けられました。

虚血性心疾患とは?

さて、前述のとおり、心臓は周囲を取り巻いている冠動脈を通してエネルギーが供給されています。ですから、冠動脈が狭窄(細くなること)ないし閉塞(詰まること)すれば心筋へのエネルギーは不足し、ポンプ機能は破綻します。その表現型として、胸部絞扼感(胸の重だるい感じ)や息切れ、冷や汗、といった症状が出現、われわれに危険信号を送ることになります。この、冠動脈の狭窄による症状出現を狭心症、閉塞により心筋がエネルギー不足に陥り壊死してしまう事態を心筋梗塞と呼び、それらをあわせて虚血性心疾患と呼んでいます。

虚血性心疾患の治療法は?

心エコー、運動負荷心電図、冠動脈CT、心筋シンチグラフィー、ホルター心電図など各種検査を併用して診断に至ります。さらなる精査が必要、と判断した場合には、心臓カテーテル検査などの入院検査を推奨しています。 

虚血性心疾患の診断は?

治療としては、薬物療法と血行再建があり、適宜併用して行われます。血行再建については、循環器内科で行う経皮的冠動脈インターベンション(PCI)と、心臓血管外科で行う冠動脈バイパス術(CABG)があり、患者様の背景疾患、年齢、病変性状、などを考慮し、当院ではハートチームとして協議のうえ方針を決定し、患者様に最適な医療を提供しています。

経皮的冠動脈インターベンション(PCI)

循環器内科-PCI
  • 穿刺(針を刺すこと)は全身麻酔を必要とせず局所麻酔下で行います。
  • 穿刺部については、橈骨動脈(手首)、肘動脈(肘)、大腿動脈(足のつけ根)があり、病変の性状にあわせて使い分けています。
  • 出血合併症などの観点から、病変の性状が許せば橈骨動脈(手首)からのアプローチが第一選択となっています。

治療で用いる主な医療機器

バルーンやステントサイズの決定に際して、病変性状の詳細な情報収集のために、PCI 手技中に、血管内超音波検査(IVUS)や冠動脈光干渉断層撮影(OCT/OFDI)といったデバイスを用いて、冠動脈の詳細な情報収集と治療戦略の決定を行っています。

循環器内科-IVUS
出典 TERUMO JAPANのホームページより転載

カテーテル先端内部の振動子が高速に回転しながら超高速波を血管壁にあて、超音波の反射(エコーの時間と強さを元に、血管内の様子を画像として書き出します。 (血管内超音波画像診断装置 IVUS 画像取得のイメージ)

循環器内科-IVUS2
出典 TERUMO JAPANのホームページより転載

さまざまなアテレクトミーデバイス

高度石灰化を伴っていたり、血栓閉塞をきたしていたり、プラーク(血管の壁にへばりついている脂肪の塊、動脈硬化の進行によって拡大します)が動脈壁に偏在していたりなど、冠動脈の病変性状はさまざまです。

当施設では、病変性状にあわせて、ロータブレーター、オービタルアテレクトミー、ディレクショナルコロナリーアテレクトミー、レーザーアテレクトミーなど、さまざまなデバイスを用いた質の高い治療を提供しています。
循環器内科-ロータブレーター出典 Boston Scientificのホームページより転載 循環器内科-ディレクショナルコロナリーアテレクトミー
循環器内科オービタルアテレクトミーー出典 メディキット株式会社のホームページより転載 循環器内科-レーザーアテレクトミー

当院の特色

24時間365日いつでも対応可能な救急医療体制
虚血性心疾患のうち、とくに急性冠症候群と呼ばれる急性心筋梗塞(冠動脈が詰まって心筋が壊死しつつある状態)や不安定狭心症(いまにも冠動脈が詰まりかけている状態)といった超緊急疾患に対しては、できるかぎりはやくの血行再建が必要となります。
当科では1981年(昭和56 年)12月より冠動脈造影を含む心臓カテーテル検査を開始しました。
現在では夜間休日含む24 時間365 日いつでも対応可能な緊急カテーテル検査・治療体制を整えており、地域の皆様に少しでもお役に立てるよう尽力しております。

治療で用いる主な医療機器

  • IMPELLA:補助循環用ポンプカテーテル
  • PCPS:経皮的心肺補助法
  • IABP:経皮的大動脈バルーンパンピング

血行動態が破綻した重症心不全や心原性ショックに対して、上記デバイスを用い血行動態の改善を図ることで、治療成績が改善する可能性があります。当院では積極的に上記デバイスを使用することで、ひとりでも多くの重症患者様を救うことを目指しています。

ドクターカーの運用について

循環器内科-ドクターカーの運用について
2016 年(平成28 年)4 月1日よりドクターカーの運用を開始いたしました。
急性心筋梗塞などで早期に医師による医療行為を要すると判断した場合、消防本部からの要請を受けて、消防車出動と同時に、当院からは医師、看護師が同乗したドクターカーが救急現場に出動します。

これにより、救急救命士では行うことのできない医療行為を迅速に行うことが可能になりました。これにより、重篤な患者の治療を行える事になり、高度障害が残らず社会復帰できる割合が増すと考えられます。

現在年間2000件以上の出動実績があり、うち4分の1程度が胸痛などの虚血性心疾患を疑う症状に対しての出動となっており、急性期医療への橋渡しとして重要な役割を担っています。
冠動脈の狭窄・閉塞による心筋へのエネルギー不足は虚血性心疾患といい、特に労作時の胸痛や息切れを引き起こすことがあります。
下肢の筋肉への栄養血管である動脈が狭窄・閉塞した場合には、特に労作時に足がだるくなったり、ふくらはぎが痛くなって歩けなくなったりすることがあります。これを閉塞性動脈硬化症(ASO)といいます。

治療としては、運動療法(できる限り歩くこと)、薬物療法、血行再建、が挙げられ、ASO の診断となった場合、まずは前2者の運動療法、薬物療法が選択されます。それでも改善が見込めず、歩行時疼痛のために歩行距離が稼げなくなったり安静時にも下肢疼痛が出現するようになった場合には、病変性状によっては血行再建が適応となります。

血行再建にはカテーテル治療とバイパス手術があり、適応が許せば、切らずに治す治療であるカテーテル治療が選択されます。
ASO は放っておくと、足の色が悪くなり潰瘍や壊死(栄養不足で筋肉が腐ること)を引き起こしてしまうことがあり、場合によっては足の切断が必要になる事態ともなりえます。症状でお困りの方がいらっしゃいましたら、いつでも当科にご相談ください。

診療内容・特徴

循環器内科-不整脈
不整脈診療は日々進歩しています。以前は根治が不可能であった数々の不整脈が、数時間のカテーテル治療で根治に至ることもあります。

ペースメーカや植え込み型除細動器の進歩も目覚ましく、さまざまな機能の向上や電池寿命の延長で、患者さまの生命予後の改善ならびにQOL(生活の質)を最大限に保って治療ができるようになりました。

当科では、あらゆる不整脈の治療を、有効かつ安全に行えるようにチームで診療を行っています。

主な対象疾患例

心房細動

心房細動は、心房が1分間に500拍以上で興奮し、けいれん状態となってしまう不整脈です。動悸症状や息切れ・倦怠感といった症状が出ることがあります。けいれん状態の心房内や心耳内では血栓が形成されやすくなり、脳梗塞(心原性脳塞栓症)の原因となることがありますので、リスクに応じて抗凝固療法を行います。また心房と心室の連携がなくなってしまうため、心機能が低下し、心不全の原因にもなります。その他、将来的な認知機能低下との関連も過去の研究で示唆されています。

発作性上室性頻拍

症状の特徴は、突然開始して、突然元に戻る規則正しい動悸発作です。小児期から発症することもあれば、壮年期以降に初めての発作がでる患者様もいらっしゃいます。WPW 症候群が原因で起こる不整脈発作もこれに分類されます。発作中は心拍数が200拍を超えることもあります。心臓を収縮させる興奮波が旋回する回路が形成されることで起こる不整脈で、アブレーションによる回路の離断で根治にいたります。1泊2日の入院、1時間から1時間半程度のカテーテル治療で高い根治率が期待できます。

心房粗動・心房頻拍

心房粗動は、右心房と右心室の間に存在する、三尖弁の心房側を興奮波が旋回することで起こります。脈は規則正しいことも乱れて感じることもあります。心房細動同様に脳梗塞や心不全の原因になることがあります。心房粗動のみのカテーテルアブレーション治療なら30分から1時間程度で行えますが、治療後に心房細動があらたに診断される患者様がいるため、治療後も外来での観察が必要です。心房頻拍の治療は、3Dマッピングシステムを駆使しながら回路の同定・治療を実施していきます。

上室性/ 心室性期外収縮

多くの患者さまで脈がとぶ、胸の違和感といった症状を呈しますが、無症状の患者様もいらっしゃいます。無症状で頻度が少ない場合は無治療でも問題ありませんが、頻度が多い場合や症状が強い場合は、カテーテルアブレーションで治療の対象となります。

心室頻拍

心室内から発生する異常な興奮波が原因で、心筋梗塞や心筋症などの原疾患によっておこるものと、原疾患がない元気な心臓に起こる特発性の、2つに分けられます。特発性の場合はカテーテルアブレーションのみで治療可能ですが、原疾患を有し、心機能が低い患者様の場合は心臓突然死の原因となりうるため、植え込み型除細動器とカテーテルアブレーション、薬物療法を組み合わせて治療する必要があります。

心室細動

心室内から出現する異常興奮が心室を痙攣させる最も危険な不整脈です。心臓突然死の原因となります。心筋梗塞や心筋症などの原疾患を有する場合が多いですが、Brugada症候群や特発性心室細動など、心室細動だけが生じる病気もあります。心室細動の治療は突然死の予防の為植え込み型除細動器となりますが、Brugada症候群で心室細動を繰り返す場合や、心筋梗塞急性期に心室細動が頻回に出現する場合など、カテーテルアブレーションが行われることもあります。

経皮的カテーテル心筋焼灼術(カテーテルアブレーション)

当院カテーテルアブレーション治療の特徴

全国トップレベルの症例数

当院は全国有数のアブレーション症例数を誇り、2019年884例(全国4位)、2020年902例(全国5位)、2021年950例(全国4位)、2022年1035例(全国4位)、2023年1224件(全国1位)でした。

安全な手技

重大合併症は心タンポナーデ0.2%、周術期脳梗塞0.05%、外科的修復を要する合併症は0.2%と低い合併症率で治療を行なっています。

最新の治療設備

最新の3D mapping systemや治療機器を用いて、安全性と有効性を両立し、常に最新の治療を患者さまに提供しています。

低侵襲治療

3D mapping systemなどを用いてX線透視を可能な限り削減しています。不整脈の種類にもよりますが、鎮静下でアブレーション治療を行い、極力痛みのない治療を心がけています。アブレーション前の経食道心エコーは心内血栓評価を行う検査ですが、心臓CTなどを用いて可能な限り代用しています。術前後の尿管カテーテル挿入しないことや、術後の安静時間を可能な限り短くするといった試みをしています。

短期間入院

心房細動では術後2日、その他不整脈では術翌日の退院を基本としています。ご希望の患者さまには心房細動アブレーションは最短1泊、発作性上室性頻拍や心房粗動のアブレーションは日帰りのアブレーションも検討可能です。ご希望のある方は、火曜日か木曜日の外来で相談ください。

心房細動に対するカテーテルアブレーション

拡大肺静脈隔離

心房細動の多くの原因を占める肺静脈は、上下左右4本あり、肺と心臓をつないでいます。上下肺静脈を円状に一括焼灼することにより心房細動の原因となる肺静脈からの異常な電気信号が左房内に入ることを防ぎます。肺静脈隔離は心房細動アブレーションで最も重要な治療手技になります。
循環器内科-拡大肺静脈隔離

再発率と危険性

心房細動の原因の多くが肺静脈から出現する異常電気興奮ですが、20~30%の患者様で、肺静脈以外の領域から心房細動が出現し、再発の原因となっています。当院では、標準的な肺静脈の治療以外に、初回治療から肺静脈以外から出現する心房細動を誘発し、治療を行うことで再発率の低下を試みています。

これまでの当院での治療成績は、発作性心房細動の場合、1年以内の再発率は9%、5年の再発率は20%と良い成績を維持しています。慢性心房細動になってしまった場合、慢性化してからの期間や、心エコーでの心房の大きさで再発率が変わってきます。検診などで発見された場合、多くは持続期間は1年程度ですので、この時期に治療を受けていただくと、発作性心房細動とほぼ同程度の治療効果を期待できます。

ただ持続期間が長くなると、再発率が徐々に上がってしまいます。心臓にカテーテルを挿入する際に合併症が生じることがあります。問題となるものは、心臓の周りのスペースに内出血をきたす心タンポナーデ(発生確率0.2%)と、脳梗塞(発生確率0.05%未満)です。

そのほかに、肩の穿刺が原因となる気胸、脚の付け根の穿刺部の血種、クライオバルーンによる冷凍アブレーションの際に注意を要する横隔神経麻痺(発生確率1.5%)などから、食道関連合併症などの低頻度のものまで報告があります。これらの治療に伴うリスクと、治療のメリット、治療を行わなかったときのデメリットを総合的に判断して、患者様と相談しながら治療方針を決定していきます。

治療で用いる主な医療機器

3D mapping system
循環器内科-3D-mapping-system①
循環器内科-3D-mapping-system②
循環器内科-3D-mapping-system③
バルーンアブレーション
循環器内科-バルーンアブレーション①
循環器内科-バルーンアブレーション②

パルスフィールドアブレーション(PFA)新たなテクノロジ

現在のカテーテルアブレーション治療は、不整脈の原因となっている心筋細胞を高周波通電や冷凍といった熱エネルギーを用いて細胞死させることで治療を行っています。
パルスフィールドアブレーションは新たなカテーテルアブレーションの方法であり、ターゲットとなる心筋組織に対して短時間パルスで高電圧をかけることでパルス電場を発生させ、細胞膜表面に不可逆的な穿孔を生じさせ細胞死を引き起こします。
パルスフィールドアブレーションの原理
循環器内科-パルスフィールドアブレーションの原理Heart Rhythm. 2019;16(7):1112-1120. より引用改変
心筋細胞は神経細胞や平滑筋細胞と比較してより少ないエネルギーで細胞死をきたすことが知られており、印加するエネルギーを調整することで、従来の熱エネルギーで課題となっていた食道障害/迷走神経障害や横隔神経麻痺など心臓と隣接する臓器への損傷を抑え、合併症率の低下が期待されています。
パルスフィールドアブレーションの組織選択性
循環器内科-パルスフィールドアブレーションの組織選択性

現在、多くの医療機器メーカーがこの新しいエネルギーを用いたカテーテルアブレーションデバイスを開発しており、臨床使用が始まっています。当院では、心房細動に対するパルスフィールドアブレーションを2024年9月から開始しております。
循環器内科-FARAPULSE
FARAPULSE™、 ボストン・サイエンティフィック社ホームページより

https://www.bostonscientific.com/en-US/products/catheters--ablation/farapulse.html
循環器内科-PulseSelect
PulseSelect™、メドトロニック社ホームページより

https://www.medtronic.com/jp-ja/about/news/pressrelease/2024-05-pulseselect.html
循環器内科-VARIPULSE
VARIPULSE™、ジョンソン・エンド・ジョンソン社ホームページより

https://www.jnjmedtech.com/en-US/service/pulsed-field-ablation-evidence
小児の患者様のカテーテルアブレーション
当院は、埼玉県立小児医療センターと併設となり、小児循環器科との連携をしながら多くの小児の患者さまの不整脈治療も行っております。小学校高学年程度の患者様から対応しております。
小児の患者様の場合、放射線被ばくの悪影響を成人の患者様以上に注意する必要があります。当科では、発作性上室性頻拍や心室性期外収縮などのカテーテルアブレーションはエックス線透視をほぼ使わず、場合によっては全く使用することなく、安全に治療を行い、患者様の治療後遠隔期の健康被害が起こらないように留意しております。 
ご高齢の患者様のカテーテルアブレーション
以前は、アブレーション治療は高齢の患者様には行われない傾向がありましたが、高齢になってもお元気な患者様が増えたこと、当院では合併症の出現頻度を低く抑えることができ、安全に治療を行えていることから、現在は年齢制限のようなものは設けず治療を行っています。不整脈の症状でお困りの患者様は、是非ご相談ください。 
エックス線透視削減の試み
エックス線透視は心臓カテーテル治療に欠かせないものですが、被ばく量によっては患者様、医療従事者の健康被害を引き起こします。治療の有効性、安全性が損なわれない範囲で被ばく量を軽減する必要があります。当院では、3Dマッピングシステムや心腔内エコーなどを有効に用いることで、エックス線使用を大きく削減する、あるいはエックス線を用いずに治療を行い、放射線被ばくを大きく軽減して、安全に治療することに成功しています。

徐脈性不整脈

洞不全症候群や房室ブロックといったもので、息切れや立ち眩み、意識消失などの症状を引き起こす他、心不全の原因となることがあります。薬物の影響で起こっている場合は中止することにより改善が得られる可能性はありますが、基本的な治療としてはペースメーカの植え込みが必要になります。
循環器内科-植込み型心臓電気デバイス治療
植込み型心臓電気デバイス治療
徐脈性不整脈に対する永久ペースメーカ植え込みや、心室頻拍、心室細動に対して植え込み型除細動器( ICD)の治療を行います。また、心不全の患者様には、両心室ペーシングによる心臓再同期療法(CRT)の適応になることもございます。
皮下植え込み型除細動器(S-ICD)やリードレスペースメーカなどの新しいデバイスも、必要に応じで積極的に行っております。

植え込まれたデバイスは、電話回線を用いたホームモニタリングを行うことで、ご自宅におられても異常を検出できるようになっています。
植え込みデバイス抜去
植え込み後のペースメーカや植込み型除細動器に感染を起こした場合や、ペースメーカの電線(リード)が機能不全を起こした場合、また、多数のリードが植え込まれたせいで生じるトラブルなどで、植え込まれたリードならびにデバイスの抜去が必要になることがあります。デバイス抜去術は時に重篤な合併症を引き起こしますが、当院ではハイブリッド手術室で、心臓血管外科と連携しながら、安全に植え込みデバイス抜去術を行っております。

施設認定

  • ペースメーカ植え込み術認定施設
  • 埋込型除細動器(ICD)移植術認定施設
  • 両心室ペースメーカ(CRT-P)移植術認定施設
  • 両心室ペーシング機能付き埋込型除細動器(CRT-D)移植術認定施設
  • リードレスペースメーカ植え込み及び抜去認定施設
  • 経皮的カテーテル心筋冷凍焼灼術(クライオバルーン)認定施設
  • パルスフィールドアブレーション(PFA)認定施設
  • パワードシースによる経静脈的リード抜去認定施設
循環器内科-施設認定

治療実績

当施設では年間1000件を超える患者様がカテーテルアブレーション治療を受けられており、その7割以上が心房細動に対する治療となっております。近隣医療機関からの多くの患者様のご紹介により、全国有数の症例数を維持することができています。

また、当院は近隣の施設との地域連携を密に取り組んでおり、治療後に状態の安定した患者様は積極的に逆紹介を行わせて頂いております。
循環器内科-不整脈治療実績

診療内容・特徴

近年の先天性心疾患に対する医療技術の進歩により生命予後が改善し、95%の患者が成人に到達するようになりました。
今や成人の患者が小児の患者より多いのが現状です。成人期特有の遠隔期合併症や加齢に伴う様々な併存疾患、女性では妊娠出産などの問題があり、成人としての管理が必要となってきています。小児科から循環器への移行期医療が推進され、成人先天性心疾患という専門的分野が新たに確立されております。2017年に当院が現在の新都心に病院移転するに際して、埼玉県立小児医療センターが隣接する立地となりました。

当科は先天性心疾患のキャリーオーバーした患者を小児から成人へ移行をすすめるべく新たに成人先天性心疾患専門外来を開設しました。
2017年4月の開設から2023年7月現在で患者数はのべ501人に達しております。小児科からの移行としての紹介が9割以上を占めております。

また、成人になってフォローが中断されている中年以降の患者も多数いるため、何らかの症状を生じて一般内科からご紹介いただく患者さんもおります。成人先天性心疾患専門医の資格を持つ循環器内科医と心臓血管外科医の2名の医師で週2回外来を行っております。アイゼンメンジャー症候群、フォンタン術後、チアノーゼ性心疾患などの複雑心疾患の患者さんも診療しております。外科的手術、カテーテル治療、デバイス治療などのほか、心疾患合併妊娠女性の周産期管理や呼吸循環機能が低下した患者さんへの心臓リハビリテーションも導入しております。

小児科からの移行を考えている患者さん、専門的な診療が中断されている患者さんがおられましたら当院で診療させていただきます。

ACHD診療体制(ネットワーク)

循環器内科-ACHD診療体制(ネットワーク)画像提供:先天性心疾患の成人への移行医療に関する提言より

日本の成人先天性心疾患患者数

日本の人口 1億2,760万人(2012年)
生産児 103万人(2012年)
先天性心疾患の生産児に占める頻度 1%
先天性心疾患生産児 1万300人/年
約95%が成人となる 9,780人/年
成人先天性心疾患患者数 約45万人
中等以上の疾患重症度の割合 32%
成人先天性心疾患患者増加率 4~5%/年
丹羽公一郎2015より改変。成人先天性心疾患ガイドライン2017年改訂版より

当院の2023年7月現在の成人先天性心疾患の患者数:患者合計501名(男性225人 女性276人)、平均年齢26歳(患者の年齢分布16~82歳)、紹介時平均年齢21歳

症例内訳

循環器内科-症例内訳
心房中隔欠損症は成人期に発見される先天性心疾患で最も多く、健診契機の指摘が多い疾患です。40代以降で右心不全や不整脈を生じることが多いのが特徴です。

将来的な肺高血圧や奇異性脳塞栓の予防にも閉鎖する意義は高いとされています。現在は開胸手術ではなくカテーテルによる閉鎖栓を使った閉鎖が主流です。実地認定施設である小児医療センターとの連携医療を導入しており、当院で入院しながら、カテーテルでの治療を受けることができます。
循環器内科-先天性心疾患

診療内容・特徴

当院では循環器内科や心臓血管外科に入院された方々に、入院中から心臓リハビリテーションを行っています。

これまでは心臓病の症状緩和、再発予防や予後の改善を目指してカテーテル治療を含めた手術治療や薬物治療に力を注いできました。日本循環器学会では、心臓病患者様に対して再発・再入院・長期予後改善だけでなく、生活の質の向上・運動能力の改善・抑うつ症状改善、更には虚弱予防を目指すべきであると謳っています。

また、この目標を達成するために、従来行われてきた医学的評価や疾病管理に加えて運動療法・患者教育・カウンセリングを行うことが必要であると定め、これら全てを包括したものを心臓リハビリテーションと定義しています。当院では患者様に質の高い心臓リハビリテーションを提供すべく、看護師・理学療法士・管理栄養士・生理機能検査技師・薬剤師・医師がチームを組んで治療にあたっています。退院後も心臓リハビリテーション外来に於いて多職種による手厚い治療を継続していくことを目指しています。

小児科からの移行を考えている患者さん、専門的な診療が中断されている患者さんがおられましたら当院で診療させていただきます。
日本の成人先天性心疾患患者数循環器内科-日本の成人先天性心疾患患者数
心臓リハビリテーション外来では、医師の診察後に準備体操を経て自転車運動・筋トレを行いますが、この間、常に看護師と理学療法士が立ち会い、運動療法についてだけでなく退院後の生活や治療についてお話を伺っています。

診察から御帰宅まで概ね1時間半のお時間を頂いております。皆様、毎回およそ20分ほど看護師・理学療法士・医師と話しをする時間を設けるようにしております。不安や疑問がございましたら遠慮なくお申し付けください。


循環器内科-カレンダー

週1回の心臓リハビリテーション外来を約5か月間継続しています。その間に運動機能評価を3回受けていただくことにより、適切な運動強度を提案できるよう心掛けています。また、各々の患者様についての多職種カンファレンスも期間中に3回行うことにより、多職種で治療方針を話し合うようにしています。
循環器内科-カンファレンス5か月間が過ぎましたら、御自宅近くの診療所との治療連携をお願いしております。運動療法継続も重要ですので、スポーツジムや介護保険制度を利用したデイケアセンター等への引継ぎを行っています。

心臓リハビリテーションにおいては、医師よりも看護師や理学療法士・管理栄養士などのメディカルプロフェッションの果たす役割が大きいと考えています。そこで当院では定期的に地域のメディカルプロフェッションの皆様向けに勉強会を開催しています。多い時には100名を超す皆様に参加して頂いています。これからも微力ながら地域医療に貢献していきたいと考えています。

診療内容・特徴

循環器内科-心臓血管外科
心臓血管外科の手術は、生命に直ちにかかわるため、手術適応の判断や、術前の全身検査、評価には細心の注意が必要です。心臓血管外科だけでなく、循環器内科をはじめとする病院内の各科の医師と連携し、近隣の自治医科大学附属さいたま医療センターとも協力して、患者さん1人1人にとって最適と思われる治療を行っています。

そして、納得した治療法を患者さんご自身に決定していただくことを基本方針としています。

当科での手術と対象となる疾患

虚血性心疾患 狭心症・心筋梗塞

心臓の筋肉に血液を供給する冠動脈がつまったり、狭くなっている場合に、体の別の部位から採取した血管(グラフト)を用いてバイパス行い、心臓の血流を改善します。当院では、脳梗塞などの合併症をできるだけ少なくするため、心臓を止めずに手術を行う「オフポンプ冠動脈バイパス術」を積極的に行っています。 

心臓弁膜症・不整脈

大動脈弁・僧帽弁・三尖弁などに機能不全がある場合、人工弁で置き換える「弁置換術」や、自分の弁を残して修復する「形成術」を行います。機械弁に置換後は生涯ワーファリンという血栓を予防する薬の内服が必要です。そのため、年齢が比較的若い僧帽弁閉鎖不全症の方には、ワーファリンが必要ない弁形成術を第一選択として手術を行っています。

また、従来の手術より小さな傷ですみ、痛みが少なく、回復が早い低侵襲小切開心臓手術(Minimally Invasive Cardiac Surgery: MICS)も積極的に行っています。僧帽弁、三尖弁手術は、内視鏡を用いて右小開胸アプローチによる方法で、大動脈弁手術は、右わきの下を切開する右小開胸腋窩切開アプローチという方法か、胸骨を部分的に切開する胸骨部分切開という方法で手術を行っています。

2017年6月にTAVI(経カテーテル的大動脈弁置換術)の認定を受け、8月からスタートしました。それにより、高齢の方の大動脈弁狭窄症には、開胸手術ではなく、足のつけねの血管から大動脈弁を移植する方法が可能になりました。順調に経過すると、術後3日から4日で退院できます。

心房細動などの不整脈は、左心房の一部である左心耳というところに血栓ができやすくなります。その血栓が原因で脳梗塞を発症することが知られています。もっとも血栓ができやすい左心耳を切除することで、脳梗塞を予防することができます。当院では、左心耳の切除を、内視鏡で見ながら医療用のステープラを用いて行っています。長年心房細動が続いている方、カテーテルアブレーション手術を受けても治癒しない方で、抗凝固療法が難しい方が対象になります。

大動脈疾患

胸部大動脈瘤、腹部大動脈瘤は、動脈が異常に拡張した状態で、そのままにすると破裂の危険性があるため人工血管置換術を行います。なお、低侵襲治療として注目されているステントグラフト手術も行っています。ステントグラフト手術は全身麻酔で行いますが、術後は、その日から歩くことができます。

また、大動脈に突然亀裂が入って裂けてしまう急性大動脈解離という病気の多くは、緊急手術が必要になります。当院では、緊急手術にも対応しており、24時間365日いつでも手術が行えるよう努めています。 

末梢血管(動脈・静脈)疾患

下肢の動脈が狭くなったり、つまったりして足が痛くなる閉塞性動脈硬化症にはバイパス手術を行います。当院では膝下の血管に対してもバイパス術を行っています。

また、下肢静脈瘤に対して、血管内焼灼術(ラジオ波治療)を導入しました。局所麻酔で行い、手術当日から歩行が可能です。日帰り手術も行っていますので、ご希望の方はぜひご相談ください。

治療実績

手術実績 2018年 (2018年1月〜2018年12月)総手術件468例
心臓・胸部大血管手術
199例
 MICS(低侵襲小切開手術)
30例
虚血性心疾患
37例
 オフポンプバイパス術
33例
弁膜症手術
95例
 MICS(低侵襲小切開手術)
29例
 TAVI(経カテーテル的大動脈弁置換術)
49例
胸部大動脈手術
37例
 ステントグラフト手術
9例
複合手術
17例
左心耳切除術
6例
その他
7例
腹部大動脈手術
60例
 ステントグラフト手術
30例
末梢動脈手術
39例
下肢静脈瘤手術
65例
透析用ブラッドアクセス
65例
その他
40例
さいたま赤十字病院の心臓血管外科では数多くの症例を治療してまいりました。
外来を受診される際には、何なりと遠慮なくご質問ください。「他の病院で手術を勧められたけど本当に必要ですか?」「他の病院の医師の意見も聞きたい」などのセカンドオピニオンも受け付けていますので、ぜひご相談ください。

多職種でおこなわれるチーム医療「ハートチーム」の特徴

「ハートチーム」の用語は2010年のヨーロッパのガイドラインで公式に登場しました。
当時は冠動脈の複数の病変に対する治療方針をハートチームで協議することが強く推奨される、という内容でした。

当院でも開設以来、心臓血管外科と循環器内科が日々協力しながら、冠動脈疾患だけでなく幅広い循環器疾患に対しての治療を行って参りました。それから更に時が経ち、技能技術の進歩によって、より低侵襲で手術を行えるようになった外科医と、多くのことがカテーテルで出来るようになった内科医が力を併せて治療をする時代が訪れました。

TAVIから始まった当院ハートチームも2022年現在ではMitraClip, Watchman, PFO occluderと新しい治療が行えるようになりました。これからも当院の「ハートチーム」は新しく低侵襲な治療を必要な患者様に適切に、安全に行えるように進化し続けます。

循環器内科-ハートチーム

TAVI:経カテーテル大動脈弁植込み術

大動脈弁狭窄症は加齢とともに進行し、息切れ・胸痛だけでなく突然死の原因となる疾患です。そのため加齢に従い重症となるのに対して手術リスクが高い等の理由でこれまで手術治療が受けられなかった患者様も多くいらっしゃいます。

TAVIは、重症大動脈弁狭窄症の患者様に対して心臓を止めることなく、カテーテルを使って人工弁を患者さんの心臓に留置することができます。
現在当院では2種類の弁をハートチームで相談し、患者様に合う治療法を選択しております。

また、広く行われている大腿動脈(足の付け根の動脈)からのアプローチが難しいと考えられる患者様には従来よりも小さい開胸でアプローチする経大動脈アプローチも積極的に行っております。
循環器内科-循環器内科-TAVI②
TAVIアプローチの図解および動画
循環器内科-AVIアプローチの図解および動画画像提供:エドワーズライフサイエンス(株)
当院での手術実績 2018年~2021年

2018年 2019年 2020年 2021年
TFアプローチ
47 43 37 38
TF以外
2 8 7 7
合計 49 57 44
45

MitraClip:経皮的僧帽弁形成(クリップ)術

僧帽弁閉鎖不全症を伴う心不全は心不全が増悪すると僧帽弁逆流も増悪し、お互いに作用し合うと言われています。
心不全パンデミックと言われる現代においても僧帽弁の治療が必要なのにご高齢や手術リスクが高いことから手術が受けられない患者様も多くいらっしゃいます。

MitraClipは外科的弁置換術・形成術のハイリスクの患者様に対して心臓を止めることなくカテーテルで僧帽弁をクリップすることで逆流を制御し心不全を改善させることを目的とします。

循環器内科-MitraClip:経皮的僧帽弁形成(クリップ)術①
MitraClip:経皮的僧帽弁形成(クリップ)術の図解および動画
循環器内科-MitraClip:経皮的僧帽弁形成(クリップ)術②画像提供:アボットジャパン合同会社
MitraClipは、カテーテルによる低侵襲性のデバイスで、カテーテル先端にあるクリップで僧帽弁の弁尖を留め、逆流を軽減することにより重度のMR症状を改善し、患者の生活の質(QOL)の改善が期待されます。
2008年に欧州でCEマークを取得し、米国においては2013年に器質性僧帽弁閉鎖不全症、2019年に機能性僧帽弁閉鎖不全症の適応をそれぞれ取得しました。

僧帽弁閉鎖不全症患者は、高齢、虚弱、複数の併存疾患、その他の複合的な要因によって、標準治療である外科手術が適応とならない場合が多いため、MitraClipによる治療は低侵襲の代替的治療選択肢となります。
この経カテーテルクリップ留置術は、現在は第4世代まで製品の改良を重ねており、過去16年間に世界中の約10万人のMR患者さんの治療に使用されてきました。

Watchman:経カテーテル左心耳閉鎖術

脳卒中の原因は複数報告されていますが、心房細動を原因とする脳卒中(心原性脳塞栓症)は他の原因と比べても後遺症の発症率は1.5倍、死亡率は2倍と報告されています。
非弁膜症性心房細動が原因の心原性脳塞栓症において、塞栓源となった血栓の90%以上が左心耳で形成されていたという報告があります。

現在は抗凝固薬(ワルファリン、新規経口抗凝固薬等)による塞栓形成の予防を行いますが、血液が固まるリスクがある患者様は同様に出血のリスクも高く重篤な出血を引き起こしてしまうことがあります。
Watchmanは左心耳を物理的に閉塞させることで長期間の抗凝固薬の服用ができない患者さんにおける抗凝固療法の代替療法となることで、抗凝固療法による重篤な出血リスクを減らすことを目的とします。
Watchman:経カテーテル左心耳閉鎖術の図解および動画
循環器内科-経カテーテル左心耳閉鎖術の図解画像提供:ボストン・サイエンテフィック株式会社
左心耳閉鎖(LAAC)デバイスは、1回限りの手技において全身麻酔下で心臓に留置されます。取り替える必要がない永久的なデバイスで、体の外からは見えません。
このデバイスを留置するため、医師は標準的なステント留置手技と同様、太ももに小さな切り込みを入れて細い管(カテーテル)を挿入し、次に心臓の左心耳にデバイスを誘導します。この手技は約1時間かかり、患者さんは一般的に手技の翌日から歩行が可能です。

PFO occuluder:経カテーテル卵円孔閉鎖術

循環器内科-経カテーテル卵円孔閉鎖術
特殊な原因による脳梗塞もあります。その中の1つが、PFO(卵円孔開存)による脳梗塞です。

PFO(卵円孔開存)が脳梗塞を起こすしくみは以下の通りです。
心臓の左右の心房の間の心房中隔に胎児期に開いている卵円孔は、右心房から左心房へ酸素を送り込む役割を果たします。通常であればPFOは生後自然に閉じます。
ただし健康な方でも4人に1人は空いたままになっているといわれています。

通常は症状もなく、治療の必要もないとされていますが、まれに卵円孔が閉じずに開存しているために右心房から左心房に血液が直接流れ込み、その血流にのった血栓(=血のかたまり)が卵円孔を通過し脳に達することで脳梗塞の原因になるといわれています。
PFO occuluder:経カテーテル卵円孔閉鎖術の図解および動画
循環器内科-経カテーテル卵円孔閉鎖術の図解①画像提供:アボットジャパン合同会社
卵円孔が脳梗塞に関与したと考えられるものは奇異性脳塞栓症の内11%程度と考えられており、本治療は卵円孔を閉鎖することにより脳梗塞再発を防ぐことを目的とします。
カテーテルを用いて足の付け根から針穴のみで特殊な閉鎖栓(オクルーダー)を留置することで卵円孔を閉鎖し、通路を遮断します。


診療内容・特徴

当院CCUは昭和52年(1977年)に開設され、その後の現在も14床のベッドを循環器内科・心臓血管外科によるclosed CCUとして運用を行っております。

入室する患者は心臓血管外科術後やハイリスクPCI後の患者さんだけでなく、心原性心肺停止蘇生後や劇症型心筋炎など循環器疾患を有する重症度の高い患者さんも多く入室し集中治療を行っております。

多職種による連携

循環器内科-CCU画像提供:日本アビオメッド株式会社
CCU専属薬剤師や心リハ指導士を取得している理学療法士、心不全看護に関わる認定看護師等心疾患に専門性の高い多職種と一緒に循環器周辺疾患を含めた患者様を中心とした集中治療を心がけております。

また近年、集中治療室での医療機器の進歩もめまぐるしく臨床工学技士と協力しながら安全かつ効果的な治療を行っております。

Impella:経皮的補助人工心臓

循環器内科-Impella画像提供:日本アビオメッド株式会社
VA-ECMO、IABPといった既存の機械的循環補助デバイスに加えて2020年から当院でもImpellaが使用可能となりました。
Impellaは、経皮的または経血管的に左心室に挿入され循環補助を行う心内留置型ポンプカテーテルです。最も緊急時に頻用されるImpella CP SmartAssist の補助流量は 1 分間に最大3.7 Lで、左心室から直接脱血を行い、大動脈への順行性送血を行います。
対象疾患は急性心筋梗塞による心原性ショックに限らず高度救命救急センターに搬送される激症型心筋炎や心不全急性増悪等の幅広い薬物抵抗性心不全となります。

更に補助流量が必要な病態に対しては心臓血管外科とコラボレーションし補助流量補助流量が1分間に最大5.5LのImpella 5.5 SmartAssistを積極的に使用しております。

当院では2020年11月から使用を開始し、2022年6月までの約1年半で延べ49症例にImpellaを使用しており、その使用数は増加傾向にあります。

高度救命救急センターとCCU

2022年4月に当院高度救命救急センターに「診断」と「治療」という2つのプロセスが同時に行える初療室として「ハイブリッドERシステム(HERS)」が導入されました。HERSではIVR-CTを用いて患者さんが移動することなく初期治療、CT検査、血管内検査・治療、手術を行うことができます。

外傷診療への使用に関して歴史も長くエビデンスも多数発表されており、近年内因性ショック・心停止へ使用することで診断・治療の迅速化、ECPR(ECMOを用いた心肺蘇生)を行う報告が増えてきています。

当院では24時間365日稼働できるドクターカーを運用しており、病院前診療からHERS、心カテ室、そして集中治療室へと心原性重症患者の診療を救急科と協力しながらシームレスに診療を行っております。
循環器内科-高度救命救急センターとCCU①
循環器内科-高度救命救急センターとCCU②

スタッフ紹介

院長補佐・部長
松村 穣

所属学会 ・資格取得状況

  • 日本内科学会 総合内科専門医 内科指導医

  • 日本内科学会 認定内科医
  • 日本循環器学会 循環器専門医
  • 日本心血管インターベンション治療学会 施設代表医
  • 日本心血管インターベンション治療学会 専門医
  • 日本心血管インターベンション治療学会 認定医
  • 経カテーテル的大動脈弁置換術関連協議会日本経カテーテル心臓弁治療学会 TAVI実施医
  • 経カテーテル的大動脈弁置換術関連協議会日本経カテーテル心臓弁治療学会 TAVI指導医
  • 身体障害者福祉法指定医
  • 臨床研修指導医養成講習会修了
部長
稲葉 理

所属学会 ・資格取得状況

  • 日本内科学会 総合内科専門医 / 指導医

  • 日本内科学会 認定内科医
  • 日本循環器学会 循環器専門医
  • 日本不整脈心電学会 不整脈専門医
  • 臨床研修指導医養成講習会修了
  • 身体障害者福祉法指定医
医療技術部長
根木 謙

所属学会 ・資格取得状況

  • 日本内科学会 総合内科専門医

  • 日本内科学会 認定内科医
  • 日本循環器学会 循環器専門医
  • 日本心血管インターベンション治療学会 専門医
  • 日本心血管インターベンション治療学会 認定医
  • 経カテーテル的大動脈弁置換術関連協議会日本経カテーテル心臓弁治療学会 TAVI実施医
  • 浅大腿動脈ステントグラフト実施医
副部長
大和 恒博

所属学会 ・資格取得状況

  • 日本内科学会 総合内科専門医

  • 日本内科学会 認定内科医
  • 日本循環器学会 循環器専門医
  • 臨床研修指導医養成講習会修了
副部長
佐藤 明

専門領域

  • 不整脈領域

所属学会 ・資格取得状況

  • 日本内科学会 認定内科医

  • 日本内科学会 総合内科専門医
  • 日本循環器学会 循環器専門医
  • 日本不整脈心電学会 不整脈専門医
  • 日本医師会 認定産業医
  • 身体障害者福祉法指定医
  • 難病指定医
  • 経皮的カテーテル心筋冷凍焼灼術指導医
  • 内視鏡下心臓レーザーアブレーションシステム指導医
  • ICD/CRT研修終了
  • 皮下植込み型除細動器院内指導医
  • GlideLight院内指導医
  • Evolution RL院内指導医
副部長
稲村 幸洋

所属学会 ・資格取得状況

  • 日本内科学会 総合内科専門医

  • 日本内科学会 認定内科医
  • 日本循環器学会 循環器専門医
  • 日本不整脈心電学会 専門医
  • 日本心血管インターベンション治療学会 認定医
  • ICRweb 臨床研究の基礎知識講座 修了
副部長
狩野 実希

所属学会 ・資格取得状況

  • 日本内科学会 総合内科専門医 / 内科指導医

  • 日本内科学会 認定内科医
  • 日本循環器学会 循環器専門医
  • 日本成人先天症心疾患学会 成人先天性心疾患専門医
  • 日本成人先天症心疾患学会 評議員
  • 日本医師会認定産業医
副部長
羽田 泰晃

専門領域

  • 虚血性心疾患
  • 血管内治療

所属学会 ・資格取得状況

  • 日本内科学会 総合内科専門医 / 認定医

  • 日本循環器学会 循環器専門医
  • 日本心血管インターベンション治療学会 専門医
  • 経カテーテル的心臓弁治療関連学会協議会 TAVI実施医
副部長
髙木 崇光

所属学会 ・資格取得状況

  • 日本循環器学会 循環器専門医

  • 日本内科学会 総合内科認定医 / 専門医
  • 日本不整脈心電学会 不整脈専門医
医長
大屋 寛章

所属学会 ・資格取得状況

  • 日本循環器学会 循環器専門医

  • 日本内科学会 総合内科専門医
  • 日本内科学会 認定内科医
  • 日本不整脈心電学会 不整脈専門医
医長
松田 隼治

所属学会 ・資格取得状況

  • 日本内科学会 総合内科専門医

  • 日本循環器学会 循環器専門医
  • 日本心血管インターベンション治療学会 心血管カテーテル治療専門医
医師
橘 伸一

所属学会 ・資格取得状況

  • 日本循環器学会 循環器専門医

  • 日本内科学会 認定内科医
  • 日本不整脈心電学会 不整脈専門医
医師
加藤 駿一

所属学会 ・資格取得状況

  • 日本内科学会 総合内科専門医 認定内科医

  • 日本循環器学会 循環器専門医
  • 日本集中治療医学会 集中治療科専門医
  • 日本心血管インターベンション治療学会 認定医
  • 経カテーテル的大動脈弁置換術関連協議会/日本経カテーテル心臓弁治療学会 TAVI実施医
  • 日本心エコー図学会 SHD心エコー図認証医
  • 日本周術期経食道心エコー認定医
  • 緩和ケア研修会修了
医師
磯長 祐平

所属学会 ・資格取得状況


  • 日本循環器学会 循環器専門医

  • 日本内科学会 内科専門医
  • 日本不整脈心電学会 不整脈専門医
  • 日本不整脈心電学会 植込み型心臓不整脈デバイス認定士
  • 植込み型除細動器 / ペーシングによる心不全治療研修履修
医師
中田 健太郎
嘱託医師
目黒 眞
専攻医
池口 琴乃
専攻医
黒坂 英司
専攻医
細川 藍
専攻医
飯島 由実
専攻医
佐藤 蓮

外来診療スケジュール

外来診療担当表

循環器内科

診療実績

  2020年 2021年 2022年 2023年 2024年
冠動脈造影検査(CAG) 602 649 546 743 -
冠動脈カテーテル治療(PCI) 165 294 283 283 -

(うち緊急に実施した件数)
181 205 202 233 -
末梢血管カテーテル治療(EVT) 43 44 49 60 -
カテーテルアブレーション 902 950 1035 1224 -
ペースメーカ(交換も含む) 139 144 140 166 -
リードレスペースメーカ 9 11 18 33 -
植え込み型除細動器(ICD)(交換も含む) 33 35 43 47 -
経静脈的植え込み型除細動器(TV-ICD) 27 28 31 32 -
皮下植え込み型除細動器(S-ICD) 6 7 12 15 -
心臓再同期療法(CRT-PおよびCRT-D) 12 16 21 16 -
経皮的ペースメーカリード抜去術 11 7 12 19 -
経皮的心肺補助治療(ECMO) 49 47 52 79 -
補助循環用ポンプカテーテル(IMPELLA)   22 29 32 -