お知らせ
- 学会等により休診となる場合がありますので、平日の午後、時間内に外来にお問い合わせください。
- 上部内視鏡検査(胃カメラ)を受けられる方へ
以前検査をしたけれど苦しかったなどの場合は、鎮静剤を併用すれば眠った状態で検査を受けることができます。鎮静剤をご希望の方は、検査当日は運転ができませんので公共の交通機関でおこしください。近隣の開業医、医療機関の医師と緊密な連携をとりながら診療にあたっています。
- 大腸内視鏡検査を受けられる方へ
ポリープを認め、その場で切除すると一泊入院となることがあります。以前検査をした際に痛くてつらかったなどの場合は、鎮痛など対応を行いますので、ご遠慮なくお申し出ください。
診療科の紹介・診療方針
当科では、
- 消化管がん診療 (食道・胃・十二指腸・小腸・大腸)
- 炎症性腸疾患
- 消化管出血に対する緊急内視鏡治療
の3つを軸に診療を行っております。
①消化管がん診療
消化管がんにおいては、内視鏡治療で治癒が期待できるか、それとも手術や抗がん剤治療が必要となるか、術前の診断が極めて重要です。その検査には主として内視鏡検査、CT・MRI検査がありますが、その中で最も重要となるのが内視鏡診断です。当院では全例拡大内視鏡 (瞬時に最大125倍まで拡大して病変を観察)を用いてその診断にあたっており、拡大内視鏡検査を行うことで主に早期がんにおいて内視鏡治療で治癒するかどうか予測し、その結果をもとに治療方針を決定します。また患者さんの背景を考慮することで、個々に合わせた治療方針の決定をしており、治療説明においても、患者さんが納得したうえで治療を受けられるよう、十分な時間をかけています。早期がんに対する内視鏡治療は診療・治療技術を十分習得した医師が対応し、安全かつ安心の内視鏡治療を患者さんに提供できることを第一としています。また内視鏡治療では治癒が困難な早期がんもありますので、その場合は消化器外科と緊密な連携を取ることで、過不足のない治療を患者さんに提供できるよう心掛けています。
一方、切除不能進行がんの場合は抗がん剤治療(食道がんの場合は放射線治療を併用することがあります)が中心となりますが、抗がん剤治療に熟練したスタッフがその治療にあたっています。治療は原則として外来化学療法室での通院治療となりますが、場合により入院治療となることもあります。
②炎症性腸疾患
炎症性腸疾患(Inflammatory Bowel Disease: IBD)とは消化管に慢性的な炎症を起こす原因不明の疾患であり、潰瘍性大腸炎とクローン病からなります。この疾患には定期的な消化管内視鏡検査の病状モニタリングが必須となりますが、必要に応じて鎮静剤・鎮痛剤も使用し、患者さんの負担を軽減すべく配慮しています。また近年IBDの治療は様々な新規治療薬が開発され、各段の進歩を遂げています。病状がある程度重い患者さんには新規治療法も積極的に導入しており、それにより症状が軽減した患者さんも多く見受けられます。当科では、診断・治療の両面でIBD患者さんがより効果的で負担の軽い医療を受けられるような診療体制を心掛けています。
③救急疾患における緊急内視鏡治療
高度救命救急センターを擁する当院には、多くの消化管出血患者さんが救急搬送されてきます。上部消化管出血 (食道・胃・十二指腸)に対しては緊急内視鏡治療を必要とすることが多く、内視鏡止血成功率は98%と、極めて高い成功率を維持しています。一方、内視鏡治療で止血困難な場合は血管内治療や外科治療が必要となることがありますが、常に救急医学科・消化器外科と連携することで、即座に対応できる体制を常に整えています。一方、下部消化管出血、特に近年増加傾向にある大腸憩室出血については90%近くが自然止血するため、当院での研究報告を元に、一部の自然止血困難例のみに対し緊急内視鏡治療を行っています。
診療内容
大腸内視鏡検査
大腸内視鏡検査は終末回腸から直腸まで大腸カメラを用いて観察する方法です。内視鏡の挿入は「苦しい」「痛い」という印象があると思いますが、それは腸を過伸展するために痛みが起こるためで、我々はその痛みを極力軽減するため、腸を進展させないで内視鏡を挿入する軸保持短縮法を基本としています。しかし癒着が高度であったりすると、専門医であっても痛みが生じることがあるため、その場合は積極的に鎮静剤および鎮痛剤を用いて、苦痛がない検査を受けて頂けるよう常に心がけています。
また検査中ポリープを認めた場合、それが切除すべき腫瘍なのかどうか(腫瘍・非腫瘍の鑑別)、腫瘍であった場合、腺腫なのかがんなのか、がんの場合どこまで浸潤しているのか(深達度)の診断が重要となります。一般的な施設では、それを組織検査(生検)で判断することが多いのですが、我々の施設では全例拡大内視鏡(後述)で検査を行っているため、生検を行うことなく、その場で瞬時に腫瘍・非腫瘍の鑑別および深達度診断が可能となっています。但し、拡大内視鏡は通常の内視鏡よりも太いため、挿入にも高度な技術が必要となっています。
拡大内視鏡検査
がん診療においては早期発見・早期治療が極めて重要です。消化管のがんにおいては、病気が進行すると粘膜の模様や微細な血管の走行に異常が現れますが、初期の段階ではその変化を通常の内視鏡では認識できない場合もあります。当院では全例高画質の拡大内視鏡を用いており、最大拡大倍率125倍の光学ズームで観察することで、微小な早期癌の発見に心掛けています。また拡大内視鏡で発見した病変の広がり具合や深達度を拡大観察で診断することも、患者さんの治療方針を決める上で極めて重要となります。
内視鏡的粘膜下層剥離術 (ESD)
内視鏡的粘膜下層剥離術 (ESD)は、腫瘍径の大きな早期がんや粘膜下層に深く浸潤した早期がんに対して、一括切除を目的とした内視鏡手術です。従来はワイヤーを腫瘍にかけて切除する内視鏡的粘膜切除術 (EMR)が行われてきましたが、20mm以上になると分割切除になる可能性が高くなります。分割切除の問題点は、分割した部分で病理組織診断が不十分になってしまうこと、さらに遺残再発の可能性が20%認められるということです。またがんが深く浸潤している場合、EMRでは深部で腫瘍が残存する可能性(深部断端陽性)も否めません。それを解決すべく発案されたのがESDで、現在では食道、胃、大腸において、腫瘍径の大きい早期がんや粘膜下層浸潤がんに対し広く行われるようになっています。ESDにより病変の完全一括切除が可能となることで再発リスクを極めて低率にすることができるだけでなく、摘出検体の詳細な病理組織診断が可能となるため、より正確な治療方針を決定することが可能となります。
しかし、わずかなスペースでの粘膜切開・剥離となるため、技術的に難易度が高いことも少なくなく、その際、偶発症としての穿孔(胃や腸に穴が開くこと)のリスクが問題となります。胃のESDではすでに多くの内視鏡医が手技に熟練しているため、当院でも熟練医と修練医が治療を担当していますが、食道や大腸においては技術的に難易度が高くなるため、当院では症例件数が豊富な熟練医が担当することで、患者さんの安全を担保するよう心がけています。
食道胃静脈瘤治療 (門脈圧亢進症)
食道胃静脈瘤とは、肝硬変などに合併する肝臓内の血流異常(門脈圧亢進症)に起因した疾患です。食道静脈瘤の治療は内視鏡的静脈瘤結紮術 (EVL)がその簡便性から広く普及していますが、当院ではより再発の少ない治療を目的として、内視鏡的静脈瘤効果療法 (EIS)も多く行っています。また内視鏡治療難治例に対しては、必要に応じてカテーテルを用いた血管内治療を用いることで、静脈瘤の完全消失を心掛けています。一方胃静脈瘤に対しては、より専門性の高い知識と技術が必要となります。時に経過観察が妥当な胃静脈瘤も存在するため、当院では内視鏡所見はもちろん、肝臓内の血行動態を超音波やCTで十分評価したうえで、治療の必要性を評価しています。もし治療が必要と判断した場合は、バルーン塞栓下逆行性静脈瘤塞栓術
(B-RTO)によるカテーテル治療を行い、その対応に対しては全例静脈瘤治療に精通した専門医が行っています。
スタッフ紹介
専門領域
- ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)等の内視鏡治療
- 食道・胃静脈瘤の診断と治療
- 超音波診断
所属学会 ・資格取得状況
専門領域
所属学会 ・資格取得状況
日本専門医機構 認定内科専門医
- 日本消化器病学会 消化器病専門医
- 日本消化管学会 胃腸科専門医
- 日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医
- 日本救急医学会 ICLSインストラクター
- 日本内科学会 JMECCインストラクター
専門領域
所属学会 ・資格取得状況
日本専門医機構 認定内科専門医
- 日本消化管学会 胃腸科専門医
- 日本消化器病学会 消化器病専門医
- 日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医
外来診療スケジュール
外来診療担当表
診療実績
ESD件数
| 食道ESD(件) | 胃ESD(件) | 大腸ESD(件) |
2020年 | 20 | 128 | 132 |
2021年 | 23 | 146 | 143 |
2022年 | 16 | 166 | 144 |
2023年 | 33 | 154 | 129 |
2024年 | 31 | 139 | 122 |
偶発症
| 食道ESD | 胃ESD | 大腸ESD |
一括切除率 | 99.5% | 99.6% | 99.5% |
R0切除率 | 99.0% | 98.3% | 98.9% |
術中穿孔 | 1.6% | 1.1% | 0.3% |
遅発穿孔 | 0% | 0.4% | 0.1% |
後出血 | 0% | 2.6% | 0.7% |
検査件数
| 上部消化管内視鏡検査(件) | 下部消化管内視鏡検査(件) |
2020年 | 5975 | 3418 |
2021年 | 6374 | 3692 |
2022年 | 6281 | 3512 |
2023年 | 6370 | 3541 |
2024年 | 6372 | 3651 |