消化器外科

診療科一覧

お知らせ

学会等により休診となる場合がありますので、平日の午後、時間内に外来にお問い合わせください。

診療科の紹介・診療方針

消化器外科は食道・胃・小腸・大腸・肝臓・胆道・膵臓といった、消化機能に関わる臓器に対して、主に外科治療(手術)を行う診療科です。消化器がんに対する診療のほか、虫垂炎、消化管穿孔や腸閉塞、胆嚢炎といった腹部救急疾患、鼠経ヘルニアや腹壁ヘルニアといった一般外科で扱う疾患の診療も担当します。
 
当院は平成17年から地域がん診療連携拠点病院に指定されており、当科でも腹腔鏡下手術やロボット支援下手術といった、高度で良質ながん診療の提供に努めております。がん治療に対するセカンドオピニオン外来も行っております。

実際のがん診療では、消化器内科、腫瘍内科、放射線科、病理診断科など他科とも連携して、患者さんごとに最適な治療法を選択します。
食道・胃や大腸の早期癌については内視鏡治療が可能かどうか検討します。内視鏡治療が適応となる場合は、消化管内科で治療を受けていただきます。
進行癌に対しては化学療法(抗がん剤や分子標的治療薬など薬剤による治療)や放射線治療を組み合わせた、集学的治療を行います。

診療内容

診療対象とする主な疾患

消化器外科においては主に以下の疾患を扱っております。

消化管外科

肝胆膵外科

一般外科

腹部救急外科

ロボット支援下手術について

当院では胃癌および食道胃接合部癌に対し、腹腔鏡下手術に加え、ロボット支援下胃切除術を行っています。術式及び適応は以下のとおりです。
(ご自身の病状がロボット支援下胃切除の適応となるかどうかは担当医にご相談してください。)
1.ロボット支援下幽門側胃切除術
適応:胃の肛門側2/3に存在する胃癌


ロボット支援下胃切除術①
2.ロボット支援下噴門側胃切除術
適応:胃の口側1/3に存在する早期癌や食道胃接合部(食道と胃の境界付近)癌

ロボット支援下胃切除術②
3.ロボット支援下胃全摘術
適応:胃の全体に拡がる癌など


ロボット支援下胃切除術③
ロボット支援下胃切除は2018年4月より施設条件付き(一定の腹腔鏡・ロボット手術の経験数や設備が整った病院)で保険適応となりました。
当科はこの条件を満たしており、また手術に関わるスタッフもIntuitive Surgical社による十分なトレーニングを受け、認定されております。

ロボット支援下胃切除術の特徴

開腹手術創との違い
ロボット支援下胃切除術④
ロボット支援下胃切除術⑤

腹腔鏡下手術と同様に、手術創が小さいため、術後の創痛は開腹手術と比較し軽減されます
実際の術中映像
ロボット支援下胃切除術⑥ (1)
実際の術中の様子
ロボット支援下胃切除術⑦ (1)

ロボット支援下胃切除術⑧ (1)

ロボット支援下胃切除術で期待されること

胃癌手術後の病理結果次第では、補助化学療法(抗がん剤治療)を追加で行うことがあります。術後の合併症が発生すると、入院期間が延長するだけでなく、補助化学療法開始が遅れることになります。ロボット支援下手術は低侵襲性と正確性を兼ねた手術方法であり、術後合併症率の低減、特に膵液ろう発生率の低下が期待されています。
大腸は、食べ物の最後の通り道です。小腸に続いて、右下腹部から始まり、おなかの中をぐるりと大きく回って、肛門につながります。長さは1.5〜2mほどの臓器で、結腸(盲腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸)と直腸に分かれます。

大腸癌は、大腸(結腸・直腸)に発生する癌で、腺腫という良性のポリープががん化して発生するものと、正常な粘膜から直接発生するものがあります。日本人ではS状結腸と直腸に癌ができやすいといわれています。

直腸癌に対するロボット支援下手術は、2018年4月より保険適用となりました。
当科においても2021年3月より、ダビンチXiを用いたロボット支援下直腸癌手術を開始しました。
さらに結腸癌に対するロボット支援下手術は、2022年4月より保険適応となりました。当科では同年よりロボット支援下結腸癌手術を行っております。

以下では直腸癌に対するロボット支援下手術について説明します。
ロボット支援下大腸切除術①
ロボット支援下大腸切除術②

直腸癌とは

直腸癌は大腸のなかでも直腸に発生したがんのことをいいます。
直腸癌の手術では、癌を含む腸管を切除し、さらに転移する可能性のあるリンパ節も切除します(リンパ節郭清といいます)。そののちに、腸管同士をつなぎ合わせます。
(癌の位置によっては肛門まで切除しなければならないことがあり、その場合には腸管をつなぎ合わせることができず、人工肛門となります。)
ロボット支援下大腸切除術③大腸癌治療ガイドラインの解説 2009年版より
ロボット支援下大腸切除術④杉原健一編.インフォームドコンセントのための図説シリーズ大腸癌.改訂4版, p.11、61,医薬ジャーナル社, 2012より
直腸癌の手術は病変が低い位置(=肛門に近い)にあるほど難易度が高くなります。直腸周囲には排尿機能や性機能をつかさどる自律神経が集まっており、これらを傷つけないように手術する必要があります。

手術方法

現在、直腸癌に対する手術の主な方法には、①開腹手術、②腹腔鏡下手術、③ロボット支援下手術があります。
ロボット支援下大腸切除術⑤①開腹手術 
ロボット支援下大腸切除術⑥②腹腔鏡下手術
ロボット支援下大腸切除術⑦③ロボット支援下手術
腹腔鏡下手術は開腹手術と比較して、傷が小さい、疼痛が比較的軽い、術後腸管運動の回復が早いなどの特徴があり、入院期間が短縮されて早く社会復帰できるという利点があります。
さらに腹腔鏡下手術はカメラで手術部位を近接・拡大して見ることができ、開腹手術よりも神経や細い血管がよく見えるため、少ない出血量で正確な手術を行うことができるという利点もあります。しかしながら、手術で使う器具が基本的には直線のものしかないという欠点がありました。
ロボット支援下大腸切除術⑧従来の腹腔鏡下手術で使用する器具は基本的に直線状であるため、方向を合わせるのが難しいことがあります。
これに対しロボット支援下手術では、腹腔鏡下手術の利点に加えて、ロボットアームに関節構造があったり、手振れ防止機能があったりすることにより、狭くて深い骨盤の中でも、正確で繊細な手術が行えるようになりました。
ロボット支援下大腸切除術⑨ロボット支援下手術ではアームに関節構造があり、的確な方向に曲げることができます。
直腸癌手術に手術支援ロボットを使用することにより、排尿障害・性機能障害や排便障害の低減、さらには局所再発の発生低下が期待されています。

すべての直腸癌にロボット支援下手術を行えるわけではありません。手術適応は院内のカンファレンスで慎重に検討します。また、患者さんに説明・相談したうえで決定させていただきます。

当科でのロボット支援下大腸癌手術の入院日数は、およそ2週間となります。
手術は全身麻酔下に行います。
術者は関連学会の指診や、ダビンチ製造元のインテュイティブサージカル社が定めた術者条件を満たす外科医が担当します。
手術費用は2025年現在、従来の腹腔鏡下手術と同額です。
ロボット支援下膵切除術①
膵臓は胃の裏に位置し、お腹の中でも深いところにあります。また、非常に重要な臓器・血管に隣接しています。長さ20cm、厚さ2~3cm程度の細長い臓器であり、消化液である膵液の他、インスリンやグルカゴンなど血糖をコントロールするホルモンを分泌しています。

膵臓の手術は多くの消化器外科手術の中でも特に高難度であり専門性が高いことが知られています。当院は学会に診療実績が認められ、膵臓や胆道、肝臓の高難度手術のhigh volume centerとして認定されています(肝胆膵外科高度技能専門医修練施設A)。

ロボット支援下膵切除術は2020年4月に保険適応となっていますが、厳しい施設基準があり、施行可能な施設は全国でも限られています。当院では2021年5月から施行可能となりました。

膵臓の手術は多様なものが存在しますが、主に二種類です。それは膵体尾部切除と膵頭十二指腸切除です。

膵体尾部切除術

膵臓の体部と尾部を切除する術式です。病気の範囲により尾部のみを切除する場合もあります。膵尾部には脾臓が付着しており、脾臓も一緒に切除することが多いですが、病気によっては脾臓を残すことも可能です。
膵体尾部切除の場合の膵切除範囲
ロボット支援下膵切除術②
膵体尾部切除後イメージロボット支援下膵切除術③

膵頭十二指腸切除

膵臓の頭部(膵頭部)を切除する術式です。膵頭部は膵全体の1/4~1/3程度ですが、十二指腸、胆管と密着しているため一括切除する必要があります。そのため、食事や消化液の通り道を作りなおす必要があります。図のように膵臓と小腸、胆管と小腸、胃と小腸をそれぞれつなぎなおします。

膵頭部切除の場合の膵切除範囲

ロボット支援下膵切除術③

膵頭十二指腸切除後イメージ


ロボット支援下膵切除術⑤

膵頭十二指腸切除後再建図

膵臓癌、胆管癌、十二指腸乳頭部癌、膵神経内分泌腫瘍、膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)、粘液性嚢胞腫瘍(MCN)など
※ご自身の病状がロボット手術の適応となるかは主治医にご相談ください。

ロボット支援下膵切除術⑥

小さな手術創

ロボット支援下膵切除術⑦
ロボット支援下膵切除術⑧
通常の開腹手術(お腹を大きく切って開ける手術)では図のようにお腹の真ん中に大きな創が残ることになりますが、ロボット支援下手術の場合ははるかに小さな傷となるため見た目も目立たなくなり、術後の回復も早くなります。

高精細カメラによる術中映像

ロボット支援下膵切除術⑨.webp
ロボット支援下膵切除術⑩ (1)
高精細3Dカメラを臓器に近接させることで得られる画像は非常に細かな構造まで鮮明に立体的にみることができます。

繊細な鉗子操作による正確な手術

通常の腹腔鏡手術では術者の手の震えをゼロにすることはできませんでしたが、ロボット手術ではそれを無くすことが可能となっています。また、多関節機能により従来の腹腔鏡手術の鉗子では出来なかった操作が高いクオリティで可能となっています。
ロボット支援下膵切除術⑪
従来の腹腔鏡手術の鉗子
鉗子は細長く、挿入のための創はロボット手術同様に小さいですが、お腹の中での動きは限られています。
ロボット支援下膵切除術⑫
ロボット手術の鉗子
お腹の中で前後左右回転など、実際の手の動きと同様にスムーズに動かすことができます。

ロボット支援下膵切除術で可能となること

ロボット支援下手術は低侵襲性と正確性を兼ねた手術方法であり、術後合併症率の低減、入院期間の短縮などが期待されています。

当院におけるロボット支援下膵切除症例数

当院ではロボット支援下膵切除を積極的に行っています。2021年から年々増加しており、現在では膵切除症例の8割程度がロボット支援下手術の適応となっています。

当院におけるロボット支援下膵切除症例数
ロボット支援下膵切除術⑬

スタッフ紹介

部長
新村 兼康

専門領域

  • 一般外科
  • 消化器外科(消化器がん外科治療)

所属学会 ・資格取得状況

  • 日本外科学会 外科認定医 / 専門医

  • 日本消化器外科学会 消化器外科認定医 / 専門医 / 指導医
  • 日本消化器外科学会 消化器がん外科治療認定医
  • 日本肝胆膵外科学会 肝胆膵外科高度技能専門医
  • 日本肝胆膵外科学会 肝胆膵外科評議員
  • 日本胆道学会 指導医
  • 日本静脈経腸栄養学会 認定医
  • 日本静脈経腸栄養学会 TNT研修会修了
  • 日本乳がん検診精度管理中央機構マンモグラフィー読影認定医
  • 全国自治体病院協議会 臨床研修指導医養成講習会修了
  • 緩和ケア研修会修了
院長補佐・部長
中村 純一

専門領域

  • 一般外科
  • 消化器外科(特に大腸)

所属学会 ・資格取得状況

  • 日本外科学会 外科専門医 / 指導医

  • 日本消化器外科学会 消化器外科専門医 / 指導医
  • 日本消化器病学会 消化器病専門医 / 指導医
  • 日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医 / 指導医
  • 日本大腸肛門病学会 大腸肛門病専門医 / 指導医
  • 日本消化管学会 胃腸科専門医
  • 日本ストーマ・排泄リハビリテーション学会 ストーマ認定士
  • 日本静脈経腸栄養学会 TNTコース修了
  • 臨床研修指導医養成講習会修了
  • 日本がん治療認定医機構暫定教育医・認定医
  • 身体障害者福祉法指定医
  • 緩和ケア研修会修了
部長
加藤 敬二

専門領域

  • 消化器外科
  • 腹腔鏡外科(特に胃・大腸)

所属学会 ・資格取得状況

  • 日本外科学会 外科専門医 / 指導医

  • 日本消化器外科学会 消化器外科専門医 / 指導医
  • 日本消化器外科学会 消化器がん外科治療認定医
  • 日本内視鏡外科学会 ロボット支援手術プロクター
  • 日本内視鏡外科学会 技術認定医
  • 日本ロボット外科学会 専門医 Robo-Doc Pilot 国内B級
  • 緩和ケア研修会修了
部長
芝﨑 秀儒

専門領域

  • 消化器外科
  • 腹腔鏡外科(特に胃)

所属学会 ・資格取得状況

  • 日本外科学会 外科専門医 / 指導医

  • 日本消化器外科学会 消化器外科専門医 / 指導医
  • 日本消化器外科学会 消化器外科認定医
  • 日本食道学会 食道科認定医
  • 日本食道学会 評議員
  • 日本内視鏡外科学会 技術認定医
  • 日本内視鏡外科学会 評議員
  • 日本がん治療認定医機構 がん治療認定医
  • 日本ロボット外科学会 専門医 Robo-Doc Pilot 国内A級
  • 緩和ケア研修会修了
副部長
佐原 八束

専門領域

  • 消化器外科
  • 腹腔鏡外科(特に膵・胃)

所属学会 ・資格取得状況

  • 日本外科学会 外科専門医 / 指導医

  • 日本消化器外科学会 消化器外科専門医 / 指導医
  • 日本消化器外科学会 消化器がん外科治療認定医
  • 日本肝胆膵外科学会 高度技能専門医
  • 日本内視鏡外科学会 技術認定医
  • 緩和ケア研修会修了
副部長
小林 建太
医長
冨澤 聡史
医師
井形 悠

所属学会 ・資格取得状況

  • 日本外科学会 外科専門医

  • 日本消化器外科学会 消化器外科専門医
  • 日本肝胆膵外科学会 高度技能専門医
  • 日本内視鏡外科学会 技術認定医
  • 緩和ケア研修会修了
医師
永仮 晃大

専門領域

  • 大腸外科
  • 腹腔鏡手術
  • ロボット支援下腹腔鏡手術

所属学会 ・資格取得状況

  • 日本外科学会 外科専門医

  • 日本消化器外科学会 消化器外科専門医
  • 日本消化器外科学会 消化器がん外科治療認定医
  • 緩和ケア研修会修了
  • 内痔核治療法研究会 四段階注射法修了
医師
龍 喬子
医師
田部 俊輔
専攻医
白石 健太
専攻医
東 航輝

外来診療スケジュール

外来診療担当表

消化器外科

診療実績

  2020年 2021年 2022年 2023年 2024年
食道がん 1 7 4 - -
  (鏡視下) 1 7 4 - -
胃がん 45 60 56 - -
  (鏡視下) 43 56 56 - -
  (ロボット支援下)   27 41 - -
大腸がん 161 163 194 - -
  (鏡視下) 134 151 191 - -
  (ロボット支援下)   15 49 - -
肝臓がん 32 34 41 - -
  (鏡視下) 14 21 29 - -
胆道がん 11 16 7 - -
  (鏡視下)     2 - -
  (ロボット支援下)     2 - -
膵臓がん 15 16 18 - -
  (鏡視下) 2 6   - -
  (ロボット支援下)   3 9 - -
膵嚢胞性腫瘍など 16 9 21 - -
  (鏡視下) 7 6 3 - -
  (ロボット支援下)   6 17 - -
胆嚢摘出術 158 151 183 - -
  (鏡視下) 151 145 174 - -
ヘルニア 139 111 142 - -
  (鏡視下) 28 44 89 - -
虫垂炎 44 44 45 - -
  (鏡視下) 41 41 44 - -
その他 209 208 209 - -
  (鏡視下) 24 58 7 - -
全体手術件数 831 891 920 - -
  (鏡視下) 445 535 599 - -
  (ロボット支援下)   51 118 - -