診療科の紹介・診療方針
総合臨床内科では不明熱や診断がつかない痛み、浮腫など、どの診療科にも分類されない患者さんを主に担当しています。2019年の診療科開始時から現在まで、新規の紹介患者さんを診療しています。伝染性単核球症、髄膜炎、肺炎などの感染症、慢性関節リウマチなどの膠原病、癌や悪性リンパ腫などの悪性腫瘍のように、検査によって発見できるいわゆる“器質的疾患”が多数見つかり、院内の当該科へ紹介し専門治療につないでいます。一方、他院での諸検査にて何も異常がないにもかかわらず様々な自覚症状で苦しんで紹介される方も多数おられます。これはいわゆる“機能性疾患”であったり、“身体症状症”のこともあります。
機能性疾患の代表的な病気は過敏性腸症候群や自律神経障害で、薬や生活習慣の是正である程度コントロールできる場合もあります。身体症状症は従来“身体表現性障害”と呼ばれていたもので、身体症状(例えば疼痛、倦怠感、めまい、など)を繰り返し訴えるものの、診察や検査で異常がなく、社会・心理的因子が背景にある場合も多く、精神科や心療内科へ紹介する場合もあります。当科にかかることにより、診断して今後の方向性を示すよう努めます。診断後の、治療については各疾患の専門科やかかりつけ医などで行っていただいています。
総合臨床内科では、教育にも力を入れています。初期研修医や学生が常にローテートして、外来や病棟管理を担いながら研修しています。厚労省の臨床研修ガイドライン2020に基づき、外来での最初の問診や身体診察も担当しています。若手医師が先入観なく詳細に診察することで診断がつきやすくなる場合もあるため、ご協力をお願いします。
診療内容
診断のつかない外来の患者さん 外来での精査および治療が困難な場合は入院にて精査を行います。
2019~2024年7月まで不明熱で当科に入院した118名の患者さんについてまとめました。
総合臨床内科に入院した不明熱症例
ウイルス感染の内訳
ウイルス感染症疑い
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13例 |
無菌性髄膜炎
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3例 |
急性気管支炎
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2例 |
菊池病
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2例 |
伝染性単核球症
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2例(EBウイルス、サイトメガロウイルス) |
流行性筋痛症
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1例 |
細菌感染の内訳
尿路感染症
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9例(AFBN、感染性腎嚢胞含む)
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口腔内感染症
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6例(抜歯後菌血症含む)
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菌血症
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5例
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蜂窩織炎/リンパ節炎
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4例 |
急性胆管炎( 胆石の通過を含む)
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3例 |
化膿性関節炎
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3例 |
肝膿瘍
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2例 |
気管支炎・肺炎
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2例 |
細菌性髄膜炎
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1例 |
炎症性粉瘤
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1例 |
非閉塞性腸間膜虚血 (NOMI)
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1例 |
上行結腸憩室炎
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1例
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心嚢腔嚢胞感染(先天心ope後)
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1例
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精巣上体炎
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1例
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ルート感染 |
1例 |
膠原病 etcの内訳
結晶性関節炎 |
5例 |
頚部/大腿(コロナワクチン後含む)/腸腰筋炎 |
4例 |
顕微鏡的多発血管炎 |
3例 |
反応性関節炎 |
3例 |
リウマチ性多発筋痛症 |
1例 |
炎症性動脈瘤 (ステント術後) |
1例 |
川崎病 |
1例 |
腸疾患に伴う非特異的関節炎 |
1例 |
左股関節炎(変形性股関節症) |
1例 |
右仙腸関節炎 |
1例 |
成人発症スチル病 |
1例 |
傍椎体の軟部組織に急性炎症疑い |
1例 |
悪性腫瘍の内訳
悪性リンパ腫
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3例 |
骨髄癌腫症、胃癌、肝不全、DIC
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1例 |
トルソー症候群による脳梗塞 (肺癌、肝癌)
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1例 |
特発性肺線維症、下葉肺癌
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1例 |
中枢要因の内訳
下垂体腫瘍による視床下部症候群
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1例 |
ヘルペス脳炎
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1例 |
下垂体腺腫(プロラクチノーマ)
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1例 |
出血を随伴した海綿状血管腫
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1例 |
その他の内訳
原因不明(1例は剖検まで施行)
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7例 |
脱水
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3例 |
薬剤性(好酸球性肺炎含む)
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3例 |
中毒疹
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2例
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Covid-19ワクチン接種後の発熱
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1例 |
超高齢者の過敏性腸症候群
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1例 |
透析膜のアレルギー
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1例 |
門脈血栓症、上腸間膜静脈血栓
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1例 |
腰椎L2圧迫骨折、たこつぼ心筋症
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1例 |
機能性高体温
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1例 |
以上のように、不明熱の原因は多岐にわたります。
当院に入院した不明熱症例は感染症が
半数以上でした。細菌感染のうち、歯性感染は2番目に多く、
口腔衛生はとても重要です。
不明熱の診療は、病院の総合力が重要で、当科が起点となって
診療を行っています。
事例
歯性感染の40代女性の方の事例を紹介します。
症状は熱だけでしたが、1日1回は39℃以上の発熱が2週間以上続いていました。他の病院で精査しましたが、診断がつかず、不明熱として当科へ紹介されました。
採血でCRPという炎症を示す項目は3.5と軽度上昇していました。
下顎骨CT検査

CT検査をしてみると、左と比べて右で全体に白くなっており、右下顎骨に炎症を認めました。
ガリウムシンチ検査

不明熱の検査として、炎症がある部位に取り込まれるガリウムシンチ検査を行いました。同じ部位に異常集積がみられ、炎症の存在が確認できました。
口腔外科で歯科処置を行い、細菌に感受性のある抗菌薬で連日点滴治療を行ったところ、約2週間で治癒し退院しました。
スタッフ紹介
専門領域
所属学会 ・資格取得状況
日本内科学会 総合内科専門医
- 日本内科学会 認定内科専門医 / 指導医
- 日本循環器学会 循環器専門医
- 日本高血圧学会 専門医 / 指導医
- 日本救急医学会 ICLSディレクター
- 日本内科学会 JMECCディレクター
- 緩和ケア研修会修了
外来診療スケジュール
外来診療担当表