脳神経外科

診療科一覧

お知らせ

学会等により休診となる場合がありますので、平日の午後、時間内に外来にお問い合わせください。

診療科の紹介・診療方針

脳神経外科は"脳・脊髄に生じる疾患の予防、急性期治療、慢性期治療を網羅的に対応する診療科"とされています。高度急性期病院の当院では、おもに脳・脊髄の血管障害、脳腫瘍、頭部外傷など脳に生じる疾患、外傷の急性期治療を中心に行っています。急性期治療が一段落して病状が安定した患者さんは地域のかかりつけ医へ紹介し、日ごろの血圧、血糖、体重などの体調管理を行っていただくといった地域連携の体制をとっています。当院では必要に応じてCT、MRIなどによる画像の経過観察を行っています。

安全で確実な治療を目指すため、開頭手術の際には手術支援システムとしてナビゲーションシステムと神経機能モニタリングのほか神経内視鏡を導入しています。ナビゲーションシステムは術前の検査画像を取り込み、解析した情報を手術用顕微鏡の視野内に表示することにより、病変位置の確実な把握や安全なアプローチを行うことが可能となります。術中神経機能モニタリングは麻酔科、臨床検査技師の協力のもとに行われており、運動機能、視機能、聴覚など脳の大切な機能を司る部分を手術中に細かく把握することで後遺症を最小限にとどめることにつなげています。また神経内視鏡を用いることで、直視下で把握しにくい部分の観察や処置を可能としています。

脳血管障害を中心とした様々な場面で、ここの症例について可能であれば脳血管内治療を行うことを検討しており、少しでも患者の侵襲を抑えるような治療が行えるよう努力しています。

診療内容

脳血管障害 責任医師:高橋(血管内治療)、野下(開頭手術)

くも膜下出血、脳出血などで救急搬送される患者さんに対しては、脳血管の状態を評価し正確に診断をつけたうえで、手術適応となる患者さんについては速やかに緊急手術を行っています。また脳梗塞急性期の治療として、カテーテルによる血栓回収術や経皮血管形成術なども積極的に対応しています。
頚動脈狭窄症や頭蓋内動脈狭窄/閉塞、未破裂脳動脈瘤などについては、血管内治療と開頭手術の選択を症例ごとにカンファレンスで検討し、治療方針を決定しています。

くも膜下出血(破裂脳動脈瘤)/未破裂脳動脈瘤

脳動脈瘤頚部クリッピング術:脳動脈瘤をクリップで直接つぶし、血管を再形成します
脳神経外科-脳動脈瘤頚部クリッピング術①露出された脳動脈瘤
脳神経外科-脳動脈瘤頚部クリッピング術②動脈瘤にクリップをかけてつぶし、血管を再形成します。
脳神経外科-脳動脈瘤頚部クリッピング術③インドシアニングリーン術中蛍光造影で、動脈瘤がつぶれたこと、周囲の動脈の血流に影響がないことを確認します。
脳動脈瘤コイル塞栓術:破裂前交通動脈瘤
脳神経外科-脳動脈瘤コイル塞栓術①治療前の左内頸動脈造影、前交通動脈瘤に造影剤が入ります。
脳神経外科-脳動脈瘤コイル塞栓術②脳動脈瘤の中に、細いカテーテル(マイクロカテーテル)を誘導(この例では2本誘導しています)、プラチナ製の柔らかな糸状のコイルで脳動脈瘤の中を埋めていきます。左の写真はコイルを入れたのち、コイルが血管に、はみ出していないかを造影剤を流して確認します。右の写真はコイルの形状が左よりわかりやすい写真になっています。
脳神経外科-脳動脈瘤コイル塞栓術③コイルの充填により脳動脈瘤内に造影剤が入らなくなりました。
大型脳動脈瘤に対する脳血管内治療
編み目の細かなステントで(フローダイバーター)動脈瘤前後の動脈を覆うことで、徐々に脳動脈瘤内が血液の塊(血栓)に変化していくことで治療します。
脳神経外科-大型脳動脈瘤に対する脳血管内治療①大きな脳動脈瘤を認めます。
脳神経外科-大型脳動脈瘤に対する脳血管内治療②フローダイバーターを留置(赤矢印)
脳神経外科-大型脳動脈瘤に対する脳血管内治療⑤フローダイバーターの図
脳神経外科-大型脳動脈瘤に対する脳血管内治療⑥治療直後、動脈瘤内への血流が減少


脳梗塞超急性期

主幹動脈(頭蓋内の太い動脈)閉塞には血栓溶解療法(t-PA静注療法)のほか、血管内治療を行うことがあります。
血栓回収術(血管内治療):閉塞した血管まで特殊な器具を誘導し血栓を取り出します
脳神経外科-血栓回収術①左中大脳動脈で造影が途絶しています。
脳神経外科-血栓回収術②ステント型と吸引型の血栓回収機器を、閉塞部を越えて留置したところ。
脳神経外科-血栓回収術③血栓を回収し、再開通を確認しました。
脳神経外科-血栓回収術④摘出血栓は5mm程度です。血栓を取り除けなければ、広範囲な左大脳半球の脳梗塞に陥り、重度右片麻痺、言葉の障害などが残存して寝たきりで、ご飯も食べられず流動食での生活となるところでした。

頸動脈狭窄症

顎の高さ付近で頸動脈は脳を栄養する内頸動脈と、皮膚、骨、硬膜などを栄養する外頸動脈に枝分かれします。動脈硬化による狭窄(血管内腔が狭くなる)をおこしやすい部位で、脳梗塞の原因となります。詰まりそうなぐらいに高度狭窄となると外科的な治療を行うことがあります。
頸動脈ステント:カテーテルによる治療
脳神経外科-頸動脈ステント①治療前は、糸のように細くなっています(高度狭窄)。
脳神経外科-頸動脈ステント②ステント(網目状の構造物)を留置して、さらに風船型のカテーテルで密着させます。
脳神経外科-頸動脈ステント③治療前より、狭窄が改善しました。
頸動脈内膜剥離術:頸部の皮膚を切開後、頸動脈を切開して狭窄の原因となっているプラークを取り除きます。
脳神経外科-頸動脈内膜剥離術①頸部を切開し、頚動脈を確保します。
脳神経外科-頸動脈内膜剥離術②頸動脈を切開し、動脈内のプラークを剥離。
脳神経外科-頸動脈内膜剥離術③頸動脈内のプラークを摘出。
脳神経外科-頸動脈内膜剥離術④切開した頸動脈を縫合。

硬膜動静脈瘻

稀ですが、治療で改善が見込まれる脳血管障害のひとつに硬膜動静脈瘻があります。眼の充血や耳鳴(動静脈シャントによる雑音)、静脈のうっ血による症状(麻痺、言語障害、認知機能低下、けいれんなど)で見つかったりします。
下記は進行する認知機能障害があった患者さんで、食思不振を契機に頭部CTで検査を行ったところ、左側頭葉皮質下出血を認めました。MRIでは左側頭葉に異常血管陰影を認めています。
脳神経外科-硬膜動静脈瘻①頭部CTで左側頭葉皮質下出血
脳神経外科-硬膜動静脈瘻②頭部MRIで左側頭葉に異常血管陰影
脳神経外科-硬膜動静脈瘻③血管造影で左横静脈洞/S状静脈胴部硬膜動静脈瘻の診断
脳神経外科-硬膜動静脈瘻④
脳神経外科-硬膜動静脈瘻⑤全身麻酔下にカテーテル治療(コイル塞栓術)を施行
脳神経外科-硬膜動静脈瘻⑥


数ヶ月のリハビリテーションの後、以前からの認知機能障害も改善し、自立した自宅生活が送れるようになりました。
硬膜動静脈瘻に対する液体塞栓物質による経動脈的塞栓術
上述のようなコイルではなく、液体をゆっくり注入して、体内で析出し固体をとる事で病変を治療する方法
脳神経外科-硬膜動静脈瘻①左側頭部に異常血管陰影を認めます。
脳神経外科-硬膜動静脈瘻②液体塞栓物質による血管内治療(経動脈的塞栓術)で異常血管を閉塞させました。
脳神経外科-硬膜動静脈瘻③治療後に異常血管は消失しました。

脳腫瘍 責任医師:野下、井上(下垂体疾患)

髄膜腫、神経膠腫、下垂体腺腫、神経鞘腫などといった原発性脳腫瘍の9割を占める疾患に対応しており、手術適応を慎重に判断したうえで治療方針を決定しています。
良性腫瘍(大きくなるスピードが緩やかなもの)と異なり、悪性腫瘍(急激に大きくなるもの)では術後に放射線治療や化学療法(抗がん剤)での追加治療が必要となります。病理組織診断をもとに適切な治療を選択していきます。
これらに加えて転移性脳腫瘍(がんの脳転移)の患者さんで外科的治療が必要な方についても、当該科と連携して脳神経外科で手術を行っています。

脳腫瘍摘出の手術支援ツール

ナビゲーションシステムによる手術支援
脳神経外科-脳腫瘍摘出の手術支援ツール①ナビゲーションシステムを利用し、術前に作成した腫瘍の位置情報。
脳神経外科-脳腫瘍摘出の手術支援ツール②術前にMRIから作成した腫瘍の位置情報を手術中の顕微鏡の視野内に表示します。
5-アミノレブリン酸による術中蛍光診断
脳神経外科-アミノレブリン酸による術中蛍光診断
悪性神経膠腫については、術前に投与した薬剤(5-アミノレブリン酸)を取り込んだ腫瘍がピンク色に発色させることで、適切な切除範囲を確認することができます。
開頭脳腫瘍摘出術前の腫瘍栄養血管塞栓術
腫瘍が血管に富む場合、開頭摘出術中の出血量を軽減する目的で、カテーテルによる腫瘍栄養血管塞栓術を行うことがあります。
脳神経外科-開頭脳腫瘍摘出術前の腫瘍栄養血管塞栓術①左小脳に造影剤によく染まる腫瘍を認めます。
脳神経外科-開頭脳腫瘍摘出術前の腫瘍栄養血管塞栓術②左は塞栓術前、右は塞栓術後、造影剤が入る範囲が縮小しています。
脳神経外科-開頭脳腫瘍摘出術前の腫瘍栄養血管塞栓術③左は塞栓術前、右は塞栓術後
回転DSA:立体的に見える画像では塞栓術前後での違いがより分かりやすくなります。

経鼻内視鏡下垂体部腫瘍摘出術

経鼻内視鏡下手術について
本手術方法は、頭や口の傷が目立たず、患者さんの身体に負担がかからないように、鼻の中から内視鏡と手術用の道具を入れて、脳の奥深くにある病変に対する手術方法です。神経内視鏡を使用して、腫瘍や周囲の正常構造物を拡大しながら手術を行いますので、安全で確実な手術を行うことができます。腫瘍の大きさが比較的小さい場合には、片側の鼻の穴から内視鏡と手術道具を用いて手術を行います。その為、鼻の切開が必要最小限で済みますし、頭に傷がつくこともありませんので、傷の治りが早く、患者さんの負担がより軽くて済むと考えられます。また、腫瘍が大きな場合や病変が上下左右に少し拡大している場合には、両方の鼻の穴から内視鏡や手術用の道具を入れて治療を行います。この場合には、より視野が広くなりますので、頭を開けたりする方法では治療が難しい病変に対しても安全な手術を行うことが可能となります。
脳神経外科-経鼻内視鏡下手術について
経鼻内視鏡下手術の適応について
下垂体およびその周囲に発生する腫瘍を対象とします。下垂体腺腫、ラトケ嚢胞、頭蓋咽頭腫、脊索腫、髄膜腫の一部などの患者さんに対してはほぼ全例で経鼻内視鏡下手術を行い、良い結果が得られています。また、頭部外傷後の髄液漏がなかなか、治りにくい場合にも、本手術で対応し、早期の社会復帰を目指すことができます。
脳神経外科-経鼻内視鏡下手術の適応について①
脳神経外科-経鼻内視鏡下手術の適応について②
治療後の経過について
手術の直後から会話が可能ですし、落ち着いていれば翌日から食事も可能、通常約2〜3週間前後の入院期間での治療となります。特に症状がなければ、リハビリテーションは必要ありません。
経鼻内視鏡下手術の長所と短所
神経内視鏡を使用し、鼻の中の大きな空間を利用して、脳へのダメージを来すことなく、通常の開頭手術では到達が困難な病変を治療することが可能で、患者さんへのご負担が軽くなります。また、頭や口を傷つけることがありませんので、手術をしたかどうか、周りの人に気づかれることもありません。ただし、通常の開頭手術と違い、二次元の情報を元にして、手術を行っていますので、手術操作に経験を要します。また、頭蓋底に大きな穴が開くことがあり、再建手術が困難なことがあります。その為、我々は、必要に応じて、手術用のナビゲーションを使用しながら、腫瘍の位置を確認したり、より経験のある神経内視鏡専門医の協力を得ながら、より安全で確実な方法により、患者さんの治療にあたっています。

さいたま赤十字病院の得意技 Q&A (回答:井上 智夫 先生)

当院の脳神経外科は脳卒中、脳腫瘍、神経外傷、脊髄脊椎疾患、末梢神経障害など多岐に渡ります。
私が取り組んでいる下垂体周辺腫瘍 (下垂体腺腫、頭蓋咽頭腫、脊索腫、髄膜腫) は年間10症例前後あります。総合病院である当院では治療に際し、内分泌内科での詳細なホルモン検査、眼科での視野・視力検査、耳鼻咽喉科での鼻腔内精査など他科の先生方からの手厚いサポートがありますので、安心して手術に望むことができ、患者さんの治療に集中する態勢が整っています。私の着任以降開業医の先生方からご紹介頂く下垂体腺腫の患者さんが徐々に増えておりますので、ご協力が非常に心強く、感謝しています。
無症候性下垂体腺腫は腫瘍の増大速度は緩やかであり、経過観察されることが多いです。一方、腫瘍が徐々に増大していく、周辺構造物の圧迫による視力や視野障害などがある、また、ホルモン分泌異常などの症状が出現している場合には治療が必要です。治療に際しては、患者さんの年齢、ADL、既往歴などを十分検討した上で、腫瘍の大きさや場所に応じて、最大限の治療効果が得られ、かつ、治療後の日常生活への影響が最小限になるような治療方法を選択します。
手術に際し、下垂体腺腫に至るまでの経路は大きく分けて、鼻の穴もしくは上唇を切開する方法と頭を切る方法の2つがあります。従来は顕微鏡を使った手術が一般的でしたが、近年では内視鏡を使用した手術が主流になりつつあります。 下垂体は頭部の中央部にあり、開頭手術が極めて困難な部位の一つですが、これを打開する手段として、鼻腔から細い内視鏡を挿入して病変を摘出する経鼻的内視鏡下下垂体手術が発達しました。内視鏡手術の利点は、顕微鏡を用いた手術に比較し、病変の近傍までカメラを近づけて、図の様に広範囲な術野を得ることができ、腫瘍と正常部位の境界を鮮明に判断することが可能です。内視鏡はジョイスティックの様に自由自在に360°動かすことができますので、経鼻的内視鏡下手術は下垂体病変のみならず、前頭蓋底から歯突起上方に至るまで広範囲の病変を対象に低侵襲な手術を行うことが可能です。
内視鏡手術を行う上では、内視鏡に特化した献体による専門的で高度な手術トレーニングなどが必要でありますが、これまで私は東北大学や米国で繰り返し経験するとともに、実際の手術に際しては、経鼻内視鏡手術の治療実績のある先生に師事しながら、安全で確実な手術を心掛けています。埼玉県で低侵襲経鼻的内視鏡下手術を施行可能な施設は数施設に限られると考えられます。
一方、頭皮を大きく切開し、頭蓋骨を切り取る開頭術は、下垂体周辺に至るまで、脳を牽引することや重要構造物を栄養する穿通枝などの血管を損傷するなど患者さんに比較的負担の掛かる治療であり、頭蓋内へ大きく進展している場合以外で選択されることはほとんどありません。
脳神経外科-経鼻的内視鏡下手術とは①
脳神経外科-経鼻的内視鏡下手術とは②
脳神経外科-経鼻的内視鏡下手術とは③
下垂体腺腫は腫瘍を全部摘出することができれば、再発する可能性は極めて低く、患者さんは定期的に外来で経過観察しながら、通常の日常生活を過ごすことが可能になります。また、本術式は鼻の中からの手術であり、術後に患者さんに創部が目立つことはありませんので、美容的な側面からも、支障はないと考えられます。また、食事も術翌日から可能ですし、状況に応じて歩行して頂いています。一般的に14日前後の入院期間で退院後すぐに社会復帰することが可能です。
脳神経外科-経鼻内視鏡下手術術後の経過②
脳神経外科-経鼻内視鏡下手術術後の経過①
メリットは、先程も申し上げたとおり、患者さんへの侵襲が必要最低限で済みながらも、病変と正常部位の評価、観察を詳細に行うことができ、最大限の腫瘍摘出行うことができるだけでなく、早期の社会復帰が可能となる治療方法と考えられます。デメリットは、一時的に、味覚、嗅覚が低下することがあったり、鼻の中の分泌物が多くなることなどがありますが、多くの方は3ヶ月前後で回復します。その他、髄膜炎や髄膜鼻漏など手術に伴う合併症の可能性が0.5-3%前後の確率で生じることが懸念されますので、鼻から細菌が脳内へ移行することを予防するために、十分に補強したり、抗生剤で治療することが肝要です。
下垂体腺腫などの治療は、摘出手術のみで患者さんの治療が完結するわけではなく、内科的な治療や必要に応じた放射線化学治療、また、摘出した組織を病理医に正確に診断して頂くなど多角的なアプローチが必要な治療です。幸い当院は総合病院でありますので、他科の先生方の手厚い協力が得られる環境にあります。先生方におかれましては視野異常、ホルモン分泌異常、また、脳ドックなどで下垂体周辺部位腫瘍が疑われるような患者さんがいらっしゃいましたら、どうぞお気軽に御連絡頂ければ幸いです。宜しくお願い申し上げます。

脊椎・脊髄疾患 責任医師:井上

脊椎・脊髄疾患は大きく分けて脊椎変性疾患、脊髄腫瘍、脊髄血管性障害、脊髄・脊椎損傷、小児奇形などに分類されます。当科ではおもに成人の脊椎・脊髄疾患について治療を行っており、患者さんにとって最善、最適な治療方法をご提供致します。手足の動かしにくさ、痛み、しびれ、細かい作業ができない、腰が痛い、歩きにくいなどの症状でお悩みの方はお気軽に御相談頂ければと思います。

当科では患者さんの症状、病態に応じた投薬やブロック注射などの保存的な治療を重視しておりますが、外科的治療介入が望ましい場合には低侵襲な手術手技を選択し、最大限の治療効果を目指しております。

近年増加傾向にあるに非骨傷性脊髄損傷について

人工多能性幹細胞(iPS細胞)を用いた細胞移植研究が脊髄損傷に行われるというニュースを聞いたことがあるかもしれません。脊髄損傷という言葉は聞いたことがあるけど、自分にはあまり関係が無い話という考えの方が殆どかもしれませんが、実は、ちょっとしたことがきっかけで引き起こされてしまい、手足が今まで通りに動かなくなるなど、生活が一変しかねません。

今回は、高齢社会になり患者さんの数が徐々に増加している非骨傷性 (骨折を伴わない) 脊髄損傷についてお話しします。現在、我が国には約15万人の脊髄損傷の方がいて、毎年5000人程度の新たな患者さんが発生しているといわれています。脊髄損傷とは背骨の中を通る脊髄という繊細で重要な神経の束が障害されることで、損傷直後から手や足が動かなくなったり感覚が麻痺したりして、寝たきりや車椅子の生活になるなど日常生活に大きな影響を及ぼします。また、手足の痛みに悩んだり、血圧が不安定になったり、汗をかけなくなったり、排尿、排便調節の機能も失われてしまうこともありますし、ひどい時には呼吸ができなくなったり、生命に関わることもあります。

脊髄が背骨や靱帯など周りの組織から圧迫されているだけであれば、手術やリハビリテーションによってある程度まで回復することがありますが、一度傷んだ脊髄が完全に回復する可能性はほぼありません。これまで様々な薬物治療などが試されていますが、現時点で画期的な治療方法は確立していません。今後はノーベル生理学・医学賞を受賞した山中伸弥先生が発見したiPS細胞などを用いた神経再生治療に関する最先端の研究などにより、将来的に大きな成果が期待されている状況です。

ところで、皆さんの中には、脊髄損傷の原因は大きなエネルギーが背骨に加わること、つまり、自動車やバイクなどによる交通事故、落馬や高所からの落下などによる大怪我、また、ラグビー、アメリカンフットボール、体操、スノーボード、乗馬、サーフィンなど転倒や接触を伴う競技などによるもので、全く他人事と考えている方もいらっしゃるかもしれません。しかし実際は違います。確かに、一昔前は、激しい衝突や転落を原因とすることが多かったのですが、運転中のシートベルト着用義務の徹底やスポーツ競技の安全性に関する指導など様々な啓蒙活動が功を奏し、このような大きなエネルギーが原因となる脊椎圧迫骨折や脱臼などを伴う脊髄損傷は減少しています。変わりに増えているのが、非骨傷性頚髄損傷という脊髄損傷です。

このタイプの脊髄損傷は普段の日常生活の中で起こり、とくに中年から高齢者で増えています。このような世代の方は脊髄が靱帯や背骨などからもともと圧迫を受けている方が多く、例えば、足を踏み外して階段からころげ落ちる、濡れた玄関で滑って転ぶ、トイレを済ませた後にドアノブに頭をぶつける、木の剪定中に脚立から落ちる、急に意識が遠のいて受け身を取れずに頭をぶつけるなど比較的軽い怪我でも、骨折がなくても、重篤な症状に陥ってしまうことがあります。特に、飲酒した後は、ふらついて転びやすく、また、受け身もとることができませんので、気をつけてください。手の痺れが気になる、手袋をしている感じがする、歩くとフラフラする、お風呂の温度がわかりにくい、などの症状があれば、すでに脊髄が圧迫されている可能性があります。脊髄損傷に陥った脊髄を完全に回復させる治療方法はありませんので、はやめに是非一度、御相談いただければと思います。

脊髄損傷の治療の主体は患者さんの症状に状況に応じた適切な手術や早期のリハビリテーションですが、自宅や社会への復帰も念頭におきますと、家族、学校、職場の協力も必要不可欠と考えられます。バリアフリーが理想的とはいえ、全ての患者さんがそのような環境を整えられるわけではありません。家族構成、自宅の現況や患者さん本人の状態、学校や職場の状況など様々な環境に応じた医療サービスが提供されるような社会への変革がより一層必要になっています。適切なサポートが得られれば、症状が軽い患者さんであれば、もとの生活に近づけますし、重症の方でも自宅での生活も可能となるかもしれません。

機能的疾患

脳の血管が顔面神経や三叉神経を圧迫していることで、顔面がぴくぴく動く顔面けいれん、顔の半分に強い痛みが繰り返し起こる三叉神経痛が起こることがあります。この場合、手術により圧迫する血管の位置を神経からよけて圧迫を解除することで、けいれんや痛みから劇的に解放されます。専門外来(担当 小野田(非常勤))がありますので、気軽にご相談ください。

頭部外傷

当院では多発外傷で搬送される患者さんが多く、救急医学科と連携して治療を行っています。緊急性が高いケースにも、24時間体制で手術の対応をしています。

水頭症

手術により改善が見込める認知症のひとつに正常圧水頭症があります。歩行障害、尿失禁、認知機能低下といった特徴があり、脳神経内科と連携して診断をつけ、手術の適応を検討しています。手術は「脳室-腹腔シャント術」と「腰部クモ膜下腔-腹腔シャント術」を患者さんに応じて使い分けています。

頭痛 責任医師:野下

当科では「頭痛外来」を開設しております。頭痛の診断や治療でお困りの方はご相談ください。紹介状なしでの直接受診を希望される場合は、脳神経外科外来へご相談ください。

頭痛外来

頭痛外来(担当:野下)
頭痛外来
当科では頭痛外来を開設し、頭痛専門医が頭痛にお悩みの方の治療に対応しています。

月に1-2回の程度の頭痛で、市販の鎮痛剤の使用で乗り切れる程度なら病院での治療の介入は必要ないかもしれません。
しかし、頭痛の頻度が高く、痛みの程度が強い場合は、生活に大きな支障が生じます。頭痛で苦しんでいる方の多くは「片頭痛」とよばれる頭痛によるものです。片頭痛はずきんずきんとした拍動性の比較的強い痛みで、身体を動かしたり入浴したりすると悪化する、光や音が刺激となって悪化する、嘔気を伴うことがある、などといった特徴があります。このため頭痛がひどい間は動けなくなり、寝込んでしまうということになります。このような方は普段から頭痛の「予防薬」を服用することで、頭痛の頻度や程度を抑えることができます。

また、通常の予防薬では対応困難な重症の片頭痛については、2021年よりCGRP関連抗体薬が使用可能となりました。これは月に1回使用する注射薬で、従来の予防薬と比較して高い予防効果が期待できます。
ご興味のある方はお気軽にご相談ください。

また、「緊張型頭痛」や「群発頭痛」といった他の一次性頭痛の診断、治療も致します。
そして意外と知られていませんが、鎮痛剤に頼りすぎて服用回数が過剰な場合には「薬剤の使用過多による頭痛」という新たな頭痛を抱え込むことになり、頭痛が悪化、慢性化します。このようになるといつまでも状態は改善しませんので治療介入が必要です。
なお、頭蓋内疾患により二次性頭痛(クモ膜下出血、脳動脈解離、脳腫瘍など)を起こしているケースもありますので、頭痛で困っている方は一度、画像による診断を受けておく必要もあります。また、頭部外傷後に頭痛が続いている方もご相談ください。

日常生活への支障度の高い「頭痛」を改善させ、よりよい日常生活を取り戻せるように、患者さんとともに立ち向かっていければと考えています。

スタッフ紹介

副院長・部長
髙橋 俊栄

専門領域

  • 脳神経外科一般
  • 脳血管障害
  • 脳血管内治療

所属学会 ・資格取得状況

  • 日本脳神経外科学会 脳神経外科専門医 / 指導医

  • 日本脳神経血管内治療学会 脳血管内治療専門医
  • 日本脳卒中学会 脳卒中専門医 / 指導医
  • 日本救急医学会 救急科専門医
  • 日本脳卒中の外科学会 技術指導医
  • 障害者自立支援法指定医
  • 身体障害者福祉法指定医
  • 緩和ケア研修会修了
部長
野下 展生

専門領域

  • 脳神経外科一般
  • 脳血管障害
  • 脳腫瘍
  • 頭痛

所属学会 ・資格取得状況

  • 日本脳神経外科学会 脳神経外科専門医 / 指導医

  • 日本脳卒中学会 脳卒中専門医 / 指導医
  • 日本脳卒中の外科学会 技術指導医
  • 日本頭痛学会 頭痛専門医
  • 日本脳神経外傷学会 認定専門医
  • 日本神経内視鏡学会 神経内視鏡技術認定医
  • 身体障害者福祉法指定医
  • 緩和ケア研修会修了
副部長
井上 智夫

専門領域

  • 脳神経外科一般
  • 脳血管障害
  • 脊椎脊髄疾患
  • 下垂体腺腫
  • 神経内視鏡

所属学会 ・資格取得状況

  • 日本脳神経外科学会 脳神経外科専門医 / 指導医

  • 日本脊髄外科学会 認定医 / 脊椎脊髄外科専門医 / 指導医
  • 日本神経内視鏡学会 神経内視鏡技術認定医
  • 脳血栓回収療法実施医
医師
大友 真優子

外来診療スケジュール

外来診療担当表

脳神経外科