呼吸器内科

お知らせ

学会等により休診となる場合がありますので、平日の午後、時間内に外来にお問い合わせください。

診療科の紹介・診療方針

はじめに

理想的な呼吸器診療を目指して

医療において一番重要なことは「如何に確定診断をするか？」「確定した疾患名のもと個々の症例の病状に合わせてより良い治療方針を決めるか？」の2点につきると思いますが、呼吸器診療においてもその例外ではありません。我々呼吸器内科医が理想的な呼吸器診療をするためにはたくさんの人間の意見、考えを集め真剣に討論することが重要です。当科のように多数のスタッフを有する呼吸器内科は、スタッフみんなの力を如何に結集できるかをテーマに日々努力しているところです。

診療には外来診療、入院治療のふたつがありますが、特に入院診療においては重症症例が多いことから、入院診療を如何に充実させるかが理想的な診療に近づくために特に重要です。

当科の入院診療は原則主治医制で、1人の症例に1人の呼吸器内科医が担当します。ただ、専攻医が主治医の場合には指導医がつき、一緒に診療に当たります。また、スタッフ16名を3つのグループに分け、グループごとに日々討論しながら治療方針を決定していきます。さらには入院している全症例に対して毎週全体のカンファレンスを行い、最終チェックを行っています。個々の症例においてスタッフ全員が関わることが出来るシステム作りになっていますので、患者様には安心して治療を受けて戴けることと思います。

たくさんの呼吸器疾患のなかで、肺癌症例はより濃厚な討論が求められる疾患のひとつです。まず肺癌治療は手術、化学療法（薬物治療）、放射線治療が3本柱と言われていますが、そのすべての治療を当院で行うことが可能です。放射線治療においてはサイバーナイフによる治療が可能であり、根治のための放射線治療、化学放射線治療としての放射線治療、転移性病変に対する放射線治療、症状緩和のための放射線治療などすべての病態に対応可能です。薬物治療においては、近年薬物治療が急速に進歩しており、世界の標準治療が出来るように新たな情報のアンテナを張りながら治療しています。個々の症例において治療方法によって生命予後を左右するとも言われており、治療内容においては濃厚な討論が必要です。当科では新入院症例、治療内容変更が必要な症例において肺癌専門医を中心に毎週肺癌カンファレンスを行って治療薬剤のレジメンを決定しています。また、外科手術の必要な症例においては呼吸器外科医、病理医とキャンサーボードを毎週行っています。呼吸器内科医にとっても病理の勉強をすることは重要と考え、月に1度病理医と肺癌病理カンファレンスを行っています。

特発性肺線維症をはじめとした間質性肺疾患も難治性疾患のひとつであり、濃厚な診療が必要です。その間質性肺疾患において近年は病理学的検索目的にクライオ生検(TBLC)（凍結生検）を施行する時代になりました。当院においては間質性肺炎疾患診療を専門にしている医師がおり、間質性肺疾患におけるクライオ生検を積極的に行っています。クライオ生検を施行した症例はびまん性肺疾患の病理専門医とカンファレンス（クライオカンファレンス）を通して病理学的検討を行いながら診断および治療方針を決定しています。

呼吸器疾患の中には肺胞蛋白症というまれな疾患があります。特定疾患に指定されている疾患のひとつで最近はGM-SCF吸入療法が保険適応になりましたが、現状においても標準治療は全肺洗浄術です。その全肺洗浄術は日本全国で数施設しか施行することが出来ないため、全肺洗浄を行うことが可能な当院へ全国からかなりの症例が紹介され治療を行けているのが現状です。
呼吸器診療に関わらず現在の医療は各診療科のみでの対応は困難であり、他科連携、多職種連携、さらには病診連携、病病連携が必要で呼吸器診療もその例外ではありません。
当科では内科全体のカンファレンス、リウマチ膠原病内科と合同カンファレンスを通じて他科連携を高めています。また入院症例においては重症例が多いため、如何に全身状態、ADLを保つかが重要です。当科では重症例を中心に理学療法士、薬剤師、看護師、栄養士、緩和ケア科など多職種で話し合うリハビリカンファレンスを毎週行っています。
これからもより理想的な呼吸器診療を目指してスタッフ一同頑張っていこうと思います。

診療内容

当科における呼吸器診療の現状

当科における外来診療は毎日3ないし4名の呼吸器内科医で行っています。また専門外来として間質性肺炎専門外来を毎週月曜日、木曜日の2日間行っています。今後肺癌専門外来の開設も検討していこうと思います。当院は完全予約制の病院であり、近隣の医療機関との連携が非常に重要であり、充実させなければいけません。当科においては近隣の先生方が困っている症例をなるべく早く対応出来るように毎週約50枠の初診紹介枠を用意しており、ほとんど待たずに予約可能な状態になっています。さらに緊急入院が必要な症例において毎曜日2人の救急当番医を用意しており、可能な限り断らない呼吸器診療を頑張っているところです。

入院診療においては、当科は現在63床で診療を行っていますが、当地域における呼吸内科医師数の不足のためか、常時70人を超す入院患者さんの診療を行っています。2022年度の呼吸器内科入院延べ数は1721名でした。

肺癌においては日本のみでなく世界的にも増加傾向の悪性腫瘍であり、当院においても例外ではありません。症例数も増加傾向であり、当科入院症例の50％以上が呼吸器悪性腫瘍で占めていますが、間質性肺疾患、呼吸器感染症、気胸、COPDなど多種多彩な疾患の入院診療をしているのも当科の特徴です。特に間質性肺疾患においては、間質性肺炎専門外来を行っていること、クライオ生検など組織学的検査を積極的に行っていること、救急病院であることなどから入院症例数が他の施設よりも多いです。また当院が救急治療を柱にしている関係上細菌性肺炎を含めた呼吸器感染症の入院症例も多いです。呼吸不全を伴う症例の大部分を当科が積極的に関わっていますが、超重症の呼吸不全症例においては、当院救急医学科とタイアップしながら診療を行っています。

呼吸器疾患の診断のために　―呼吸器内視鏡の役割―

繰り返しになりますが、呼吸器診療において最も重要なことのひとつは、個々の症例において確定診断をすることです。呼吸器診療においては、詳細な問診（喫煙歴、既往歴、職業歴など）、身体診察に加えて血液検査、細菌学的検査、呼吸機能検査、画像検査、組織学的検査を行いながら、確定診断をして行きます。そのなかで組織学的検索は呼吸器診療においても診断に重要なツールのひとつです。

呼吸器診療において組織学的検索のための検査は以下のごとく多種類の検査があります。

• 気管支鏡
  ・気管支肺胞洗浄（BAL）
  ・気管支、肺生検（ガイドシース併用気管支腔内超音波断層法：EBUS-GSを用いて）
  ・超音波気管支鏡による縦隔、肺門リンパ節生検（EBUS-TBNA）
  ・クライオ生検（びまん性肺疾患を中心に）
• エコーガイド下肺、胸膜生検
• CT下肺、胸膜生検
• 胸腔鏡による胸膜生検

当科では上記の検査すべてが施行可能ですが、そのなかでも呼吸器診療の主役になっているのが気管支鏡、局所麻酔下胸腔鏡などの呼吸器内視鏡です。

当院における気管支鏡検査

呼吸器疾患の組織学的検索において最も行われているのは気管支鏡検査です。
当院では2022年度に気管支鏡検査を759例に施行しました｡気管支鏡検査の最大の目的は組織診断（生検）をすることであり、当院においても気管支鏡施行759例中65％の526例に生検を行っています。気管支鏡検査は、過去の報告でまれながら死亡例の報告があることから、我々はより安全な検査を目指しているところです。

気管支鏡検査における重要な合併症のひとつとして気道出血があり、我々も気管支鏡施行時常に気道出血に注意しながら施行しています。

近年当科ではガイドシース併用気管支腔内超音波断層法（以下EBUS-GS法）を用いて気管支鏡検査（生検）を行っています。2014年以降ほとんどの症例をガイドシース法にて生検をしています。
 
ガイドシース法にはふたつの特徴があります。第一に、ガイドシース内に超音波を挿入し、病変を超音波で描出しながら病変部位の確認をします。病変部位が同定できると診断率は一気に上がるので再検査症例が減り、とても有用と思います。また、挿入したガイドシースを気管支内に残し、そのガイドシースを通して生検しますので、ガイドシースが蓋代わりをし、出血が抑えられます。当院ではガイドシース法を用いて生検をするようになってから、1例も重篤な気道出血はありません。

また、2018年よりびまん性肺疾患に対する組織診断目的にクライオ生検を導入しました。クライオ生検は組織を凍結しながら採取する生検方法で、通常の生検より大きい検体（1センチ大）が得られることから、呼吸器疾患、特にびまん性肺疾患の診断には有用です。当科では2022年に23例のクライオ生検を行いました。クライオ生検の結果は専門病理医を交えた多職種によるカンファレンス(MDD)を行い、総合診断に努めています。埼玉県内においてクライオ生検を施行出来る施設が限られていることから、他施設からのクライオ生検依頼のための紹介も多いです。

局所麻酔下胸腔鏡

スタッフ紹介

外来診療スケジュール

外来診療担当表

採用情報

当科ではすべての呼吸器疾患に対する診療を経験する事が可能です。診断ツールとしての検査機器もすべてそろっています。
また、呼吸器内科のスタッフ数も多いことから、色々な角度から指導を受ける事が可能と思います。

現在後期研修医の先生を募集しています。興味のある方は連絡いただけたら幸いです。
（メールアドレス：松島秀和　hidematsushima27863@saitama-med.jrc.or.jp）
また、さいたま赤十字病院呼吸器内科ブログ「彩の国呼吸器科」にて当科の紹介、呼吸器診療の現状、進歩など掲載してあります。
興味にある方は読んでいただけると幸いです。