さいたま赤十字病院

肝・胆・膵内科

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診療科の紹介

肝疾患

さいたま市の肝炎地区拠点病院として 肝炎、肝細胞癌、肝硬変症、門脈圧亢進症、胃・食道・異所性静脈瘤の治療を中心に診療に当たっています。

1.肝炎

急性肝炎、B型・C型ウイルス性肝炎、自己免疫性肝疾患(自己免疫性肝炎、原発性胆汁性胆管炎など)、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD、NASH)を中心に治療を行っています。C型肝炎の治療では100%根絶を目指し、積極的な薬物療法を進めています。B型肝炎の治療は注射薬と内服薬の使い分けが重要であり、各患者さんに合わせた最適な治療を提案し、実践しています。非アルコール性脂肪性肝疾患のマネジメントは、いわゆる脂肪肝のグループから将来的に肝細胞癌や肝不全を発症するリスクの高い非アルコール性脂肪肝炎(NASH)や肝線維化症例を拾い上げることがキーとなりますが、採血検査や肝線維化を把握する最新の超音波機器、肝臓の組織を直接採取する経皮的・経静脈的肝生検など複数のモダリティを使い分け、早期診断、治療方針決定に努めています。自己免疫性肝疾患に対しても、国内のガイドラインに基づき、最適な治療を行っています。

2.肝細胞癌

肝細胞癌は早期診断が難しく、多種多様な治療法があり、病院の総合力が問われる疾患です。さいたま赤十字病院では内科的治療に加え、外科での肝切除、サイバーナイフを主軸とする放射線治療も組み合わせ、集学的治療を行っています。当科には肝細胞癌治療に熟練した専門医が複数名在籍しており、幅広い治療選択肢の中から患者さんごとに適切な治療法を選択し、高いレベルの肝細胞癌診療を行うことが可能です。

当科では早期肝細胞癌に対して従来の経皮的ラジオ波焼灼療法(RFA)に加え、肝細胞癌局所療法の新規機器として次世代マイクロ波凝固療法(MWA:microwave ablation, Emprint ablation system, Covidien社製)が新たに使用可能となりました。これらの機器を人工胸水・腹水法、fusion imagingなどの最新技術を併用して使い分け、静脈麻酔による鎮静鎮痛下で患者さんの負担の少ない局所治療を心がけています。転移性肝癌に対しても、適応があると判断した場合は患者さんと相談の上で穿刺焼灼術を施行しています。

また当科はカテーテル治療にも精通しており、中間期肝細胞癌に対する従来の肝動脈化学塞栓術(C-TACE、B-TACE、DEB-TACEなど)のみならず、脈管侵襲を伴う肝細胞癌に対する留置リザーバーを用いた肝動注化学療法(HAIC、New FP療法)など施行が一部施設に限られた治療法も選択することができ、適応があれば積極的に施行しています。

進行期肝細胞癌へは主に全身化学療法を行っていますが、この分野は近年治療の進歩が目覚ましく、進行した状態であってもある程度の長期生存が目指せる時代になりました。一方で上記カテーテル治療との使い分けや薬剤選択、化学療法の導入タイミングなど治療戦略は年々複雑化しており、専門性が高まってきています。当科では、患者さんの腫瘍状況・肝機能・全身状態を鑑みて、的確なマネジメントに努めています。

3.肝硬変症、門脈圧亢進症、胃・食道・異所性静脈瘤治療

肝硬変症に対しては、肝細胞癌や肝不全、門脈圧亢進症など合併症の発現に留意しながら、栄養療法や背景肝疾患に対する治療など長期生存とQOL改善を見据えた総合的なマネジメントを行います。

主に肝疾患に合併する食道・胃・異所性静脈瘤や門脈大循環シャントに対しては、慎重なフォローアップを行いながら、適切なタイミングで介入を提案できるよう努めています。

内視鏡を用いた結紮術(EVL)・硬化療法(EIS)、カテーテルを用いたバルーン閉塞下逆行性経静脈的塞栓療法(B-RTO)、経皮経肝静脈瘤塞栓術(PTO)、部分的脾動脈塞栓術(PSE)など専門性の高い複数の治療法を使い分け、積極的に治療に当たっています。

胆膵疾患

膵癌は年々増加しており、癌死亡数で第4位になりました。およそ50人に一人が膵癌にかかります。膵癌の予後は癌の中でも最も不良で、5年以上生存する確率は8%に過ぎず、癌全体では60%を超えるのに比べる依然厳しい状況です。当院では2012年から2017年に233人(毎年40人前後)の膵癌を診断・治療してきました。ステージ I期 4%、Ⅱ期 29.2%(ⅡA期 10.2%、ⅡB期 19.1%)、Ⅲ期16.0%、Ⅳ期50.7%で、がん診療連携拠点病院427施設の集計の各々6.1%、25.4%、17.7%、47.3%とほぼ同様の割合でした。

各ステージに応じた適切な診断・治療を肝胆膵キャンサーボードを通じて、内科外科で討論し、提供しています。I期 、Ⅱ期では手術療法を中心に、Ⅲ期、Ⅳ期では化学療法を柱に標準治療を行っています。

化学療法を受けた方の生存期間中央値は344日でした(2002−2011年までの中央地は233日)。治療成績は以前よりも改善しています。

膵癌の予後が悪いのは早期発見が難しいためであり、膵管拡張や膵嚢胞あるいは腫瘍マーカー高値などで近隣の医療機関からご紹介いただいた方には、CTやMRI検査に加え、膵臓を最も詳しく観察できる超音波内視鏡検査(EUS)を行い、早期の膵癌発見に努めています。また、必要な症例には超音波内視鏡下針生検(EUS―FNA)を行い腫瘍の組織診断を行い適切な治療に結び付けています。

膵の良性疾患では 急性膵炎を救急医学科との密な連携を行いながら、診療しています。膵炎に伴う嚢胞には、超音波内視鏡下嚢胞ドレナージによる治療を行うこともあります。

胆道癌も増えています。胆道癌はそれが生じる胆管が複雑に枝別れしているため、発生部位ごとに肝内胆管癌・肝門部領域胆管癌・胆嚢癌・遠位胆管癌と別れ、一例一例治療方針が異なり、膵癌以上に複雑な疾患です。多くの症例で黄疸を伴うため、内視鏡的逆行性胆道造影(ERCP)により適切に診断、黄疸のドレナージ治療を行い生活の質の向上を図っています。手術可能症例では積極的な手術をお勧めし、切除が難しい場合は化学療法を柱に標準治療を行っています。

胆道の良性疾患では 総胆管結石に対しERCPを柱とする内視鏡的な治療を行っています。腸管再建術後の方にはシングルバルーン内視鏡という専用の内視鏡を使用した治療も行っています。胆のう炎に対しては、手術もしくは経皮的に胆嚢にチューブを留置するPTGBDを行いますが、高齢化に伴い血液をサラサラにするお薬を複数飲んでいる方も多く、出血が危惧される場合は、胆のう炎にも内視鏡でドレナージを施行し低侵襲で治療を行っています。

2018年度の肝胆膵内科の検査実績です。肝生検76件、肝癌のラジオ波治療40件、肝動脈塞栓術53件、ERCP462件、シングルバルーンERCP33 件、EUS 268件と多数の検査を行っています。

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